研究課題/領域番号 |
17K18180
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
尾高 正朗 早稲田大学, 重点領域研究機構, 研究助手 (90748948)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍細胞(CTC) / 微細流路 / 単一細胞 / 細胞塊 / 画像認識 / 細胞ゲル包埋 |
研究実績の概要 |
血中循環腫瘍細胞(CTC)を無染色で識別し、分取する装置の技術開発を進め、従来のセルソーターの光散乱強度計測や蛍光強度計測などでは取得できない画像情報から得られる「かたち」情報に基づいて細胞を選別する「マルチイメージング・セルソーター技術」によるCTCの回収を試みている。これにより従来の抗体標識/細胞サイズ分画技術では定量的解析や回収が困難なCTCのリアルタイムで解析し、回収した「細胞(塊)」の1細胞、1細胞塊レベルでのゲノム、発現解析、さらに再培養による分子マーカーの発現を相関的に比較し、上皮間葉転換(EMT)仮説やCTCの特性を生物学的な解明につながると考えている。 初年度は、必要な細胞集団の形状、細胞核の形状を撮影し、毎秒5000画像を撮影できる高速デジタルカメラとマルチビュー光学系システム(複数の単色光明視野同時取得/比較計測技術)を組み合わせ、リアルタイムで判別する技術の原理検討を進めた。研究計画の骨格をなす、微細流路系、光学系、高速カメラ撮影、画像認識技術といったシステムの全体的な構築に成功した。 さらに、生きた細胞の分離精製方法として、生きた細胞のゲルへの包埋(カプセル化)技術を取り入れて、微弱な外部電場のスイッチングによる効果的な分離技術の開発を進めた。単一細胞、細胞塊を微小なカプセルに包埋することに成功した。このカプセルを外部電場により流れる方向が変わることを確認し、この特性を利用しカプセルを回収することを試みている。一方で、このカプセルは含まれる金属イオンとキーレート剤の濃度を組み合わせることで選択的にカプセルを解消できる現象を見出した(論文印刷中)。 また、本研究を遂行することで所属機関・研究室の研究活動の発展に効果的に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像情報から得られる「かたち」情報に基づいて細胞を選別する「マルチイメージング・セルソーター技術」のシステムの全体的な基盤構築に取り組み、成功した。特に、デザインした微細加工した流路を流れる細胞などの粒子の形状をリアルタイムで検出し、画像認識し、判定するシステムの骨格ができたことは大きな進捗とらえている。しかしながら、微細流路のデザイン、検体の処理速度、細胞を回収の能力といった詳細な評価、システム全体の性能等の十分な検証に至っていない。 また、生きた細胞の分離精製技術として、細胞のゲルへの包埋(カプセル化)に成功し、このカプセルを外部電場によって移動することができた。イメージングセソーターへの適応検討を進める中、派生した「含まれる金属イオンとキーレート剤を組み合わせることで選択的にカプセル化を解消できる特性」を見出したことは大きな利点ととらえている。今後この特性をシステムに取り入れる組み入れ、細胞回収後のアプリケーションとして利用し、発展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度構築したマルチイメージング・セルソーターを使って、特に、微細加工した流路のデザイン、検体の処理速度(流す細胞の量)、細胞を回収(状態、正確性、効果)の能力といった詳細な評価項目、システム全体の性能を検証する。 また、包埋した細胞を処理し、細胞の形状を認識させて、判別し、生きた状態でより効果的に回収できるか検討する。 最終的に、がん細胞を含んだ検体を処理し、がん細胞を回収できる技術開発を試みる。さらには回収された細胞を使って、遺伝子解析を試み、がん転移の分子生物学的な検証を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初に購入を予定いしていた 購入を予定していた高速デジタルカメラを当該予算で購入せずに、検討を進められた。 また、機械器具、消耗品を安価で購入節約することができた。 次年度の執行予算と組み合わせて、物品・消耗品の購入、修理費等に割り当てる予定です。
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