本研究は,国内世論と選挙サイクルが国際危機の政治的コストである観衆費用に与える影響を分析した。その主な研究成果は以下の3点に集約される。第1に,スタンダードな観衆費用モデルからは一様な紛争行動が予想される民主主義国が,実際にはなぜ硬軟両方の政策決定を行っている現実に対し,国内世論のバリエーションを明示的に分析枠組みに組み込むことにより理論的な説明を与えた。第2に,選挙近接性に応じ,観衆費用の大きさが変動しうる可能性を示した。第3に,政治指導者にとって観衆費用は,国際紛争勃発時のみならず,そこからの撤退時においても重要なファクターになることを明らかにした。
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