研究課題/領域番号 |
17K18187
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
相田 紗織 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教(テニュアトラック) (80746983)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 両眼立体視 / 数量知覚 / 奥行き知覚 / 3次元知覚 / 数量 / 奥行き / 認知科学 / 知覚心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は3次元の数量判断についての研究である。同じ構成要素数の2次元平面刺激と3次元立体刺激を比較すると、3次元立体刺激の構成要素数が過大評価される(3次元数量過大推定現象)。2次元平面刺激は、構成要素が1つの前額平面上にある刺激である。3次元立体刺激は、奥行き方向に構成要素が散らばった刺激である。これまでの研究において使用した3次元立体刺激は、奥行き方向に重なる2つの面として見える刺激、奥行き方向上に面として重ならない2つの面が見える刺激、奥行き方向上に構成要素が散らばる面として見えない刺激である。3次元数量過大推定現象を説明する仮説は2つある(遮蔽仮説、背景バイアス仮説)。遮蔽仮説とは、人間の視覚系は要素間に奥行きがある場合、手前の物が後ろの物を隠す可能性を斟酌しているという仮説である。背景バイアス仮説とは、立体透明視刺激を構成する構成要素が面として知覚される場合、背景面を形成する高次プロセスによって知覚される要素数が増加するという仮説である。これまでの研究の結果、3次元立体刺激の両眼視差が小さい場合、現象が起こることが示されている。また、3次元立体刺激の両眼視差が大きい場合、面の重なりがある条件、面として知覚されない条件において現象が確認された。面の平均輝度が異なる場合、両眼視差が小さい場合のみで現象が確認された。これらの結果を2つの仮説で説明することは困難である。現象を説明する新たな仮説は、3次元立体刺激の構成要素の両眼視差の処理が構成要素の数量推定過程に干渉しているという仮説(視差処理負荷仮説)である。この仮説について考察を加えた。これまで得られている実験の結果をもとに、3次元数量過大推定現象も説明できるモデルの作成を行っている。 新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により、被験者実験は行えなかった。 これらの研究結果は、PLOS ONEに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としてはほぼ順調に進展している。 心理物理学的研究はこれまでに心理物理学的実験と解析を行った。計画通りに進んでおり、論文も掲載された。 脳科学的研究の実験が新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で今年度行えなかった。その実験を次年度に予定している。それにより、論文の完成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた4年目の研究計画と、研究目的、研究予定に大きな変更はない。次年度は、fMRIを用いて、3次元刺立体激の数量弁別と密度弁別を行っている時の脳活動を測定する。これまで得た心理物理学的研究と脳科学的研究の結果からシミュレーション実験を行う。心理物理学的研究と脳科学的研究の結果をまとめた論文の完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により、fMRIを用いた脳活動計測の実験が行えなかった。また、予定していた国際会議が中止になった。 次年度では、fMRIを用いた脳活動計測の実験を行い、さらにシミュレーション実験を行い、これまで得られた結果をもとに論文を投稿予定である。
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