研究課題
令和4年度においては、前々年度以来の新型コロナウイルス感染危機の影響により、渡航調査ができなかった分の予算が残っていたことから、それを有効的に使いつつ、これまでの研究を振り返りながら論考を深め、すでに開始している今後の研究(若手研究21K13243)の発展の糸口を探ることになった。具体的には冷戦期における米・キューバ関係の中でも、特にその終結前後に着目し、冷戦終結という世界史のターニングポイントとなるような事件の前後においてどのような変化が具体的に生じたのか、あるいはそうした変化の水面下でさえ垣間見える連続性がどのように展開していたのかを考察した。こうした研究の成果として、6月には日本アメリカ学会で「移民危機はなぜ起きるのか」と題する発表を行い、新冷戦下で発生した1980年マリエル移民危機と、冷戦後の1994年に起きたバルセロ移民危機の関連について議論した。また、国際関係史のトップ・ジャーナルである国際学術誌Diplomatic Historyでは、"Migration Normalcy: Havana’s Dialogue with Washington before the Balsero Crisis”の発表にこぎつけた。この拙稿では、バルセロ移民危機の直前まで米・キューバ両国が移民危機の再発を防ぐための交渉を秘密裏に行っていたことを明かしつつ、著者が独自に入手した一次史料の分析をもとに、なぜこの交渉が失敗に終わったのかを明らかにした。その際、実はこの失敗は最初から宿命づけられていたものでは決してなく、両国の間では実は共通の理解が非公表の漸次的合意という形で形成されていたこと、にもかかわらず、米側の国内政治の要因、とりわけ政府間交渉そのものに反対する在米キューバ人勢力の活動が、外交当事者たちにとって想定以上の影響を及ぼしたことを論述した。
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Diplomatic History
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https://researchmap.jp/h-kami
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https://tnsr.org/roundtable/policy-roundtable-reconsidering-alexander-haig/