本研究の目的は、動的身体適応力の向上に有効なトレーニング要素を解明することであった。ここでいう動的身体適応力とは、「環境や自己のダイナミックな変化に対して、身体システムの要素同士を素早く柔軟に協調させて、全身を動的に安定化・組織化できる能力」のことである。 当該年度では、既存のバランス・トレーニングに含まれる要素を実験的にコントロールした実験を計画し、若年健常者を対象とした実験を実施した。具体的には、統制群として固い地面(動揺方向が限定された条件)の上でバランス・トレーニングを実施する群と、実験群として支持面が全方向に動揺する器具(スラックライン)を用いてトレーニングを行う群を比較することにした。トレーニング・メニューは、運動学習に関する先行研究を参考に1時間のトレーニング(片足立ち、歩行…など難易度を12段階で設定)の即時的な効果を同日および翌日で評価した。尚、前年度の課題であったバランス評価テストの方法についても、外乱導入装置による予測不能でダイナミックなバランス課題も取り入れた。 さらに、当該年度では加えてスラックラインの熟達者(プロ選手、インストラクターなど)にも実験に参加してもらい、初心者とバランス能力やスラックラインのパフォーマンスを比較することで、動的身体適応力の要素にアプローチした。現在、それらの実験で得られたデータについて分析・整理を行っている段階であり、国内外の学会での発表と論文化を計画している。
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