研究課題/領域番号 |
17K18193
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 武則 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (40638904)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリフェノール / 歯磨剤 / 抗菌効果 / 歯槽骨吸収抑制 / 口腔細菌 |
研究実績の概要 |
抗炎症作用、抗酸化作用が注目されるポリフェノールであるピクノジェノール(PYC)を歯磨剤に配合し口腔への応用性を検討している。平成 29 年度は PYC 含有歯磨剤の口腔内細菌に対する殺菌効果と加齢ラットを用いた歯槽骨吸収抑制効果を検討した。口腔内細菌に対する殺菌効果は、供試菌に Streptococcus mutans や Actinomyces naeslundii、Porphyromonas gingivalis を用い、これらの細菌を単一でイーストエクストラクト、ヘミンおよびビタミン K1 を添加したブレインハートインフィュージョン寒天培地に無菌的に塗抹後、滅菌ディスクに PYC 含有歯磨剤 10μlを付着させ、培地上に静置した。その後、37℃、7 日間嫌気培養し、ディスク周囲に形成された発育阻止円の直径を評価した。比較対象には 1% PYC、0.05% 塩化セチルピリジニウム(CPC)、5% カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。加齢ラットを用いた歯槽骨吸収抑制効果は、神奈川歯科大学実験動物倫理委員会の承認後、7 週齢 SD 系雄性ラットに週 5 回 1 匹あたり 0.5 ml 歯磨剤を口腔内に接種した。実験開始から 100 日後に上顎骨を摘出し、実体顕微鏡下で生理学的骨吸収量の評価を行なった。その結果、PYC 含有歯磨剤は比較対象に用いた PYC や CPC、CMC に比べて、供試菌に対して優れた殺菌効果を示した。また加齢ラットを用いた実験においても、PYC 歯磨剤接種群ではコントロールに用いた CMC 接種群と比較して有意な歯槽骨吸収量の抑制が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔内細菌に対して PYC 含有歯磨剤の殺菌効果が期待できることが示唆された。また当初予定していた抗酸化作用の評価に先立って行なわれた加齢ラットを用いた動物実験により、PYC 含有歯磨剤により歯槽骨吸収量が抑制されることが明らかになり、加齢変化による歯周組織を対象とした口腔ケアへの応用性が期待できることが示唆された。以上の結果から本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成 30 年度では、まず PYC の口腔バイオフィルム浸透性について検討を加えるため、S. mutans や A. naeslundii、P. gingivalis を単一でカバーガラス上でバイオフィルム形成後、被験試料を 5 分間作用させた後、カバーガラスに残留したバイオフィルムに Live/Dead 染色を行なって蛍光顕微鏡観察する。また PYC の抗酸化作用の評価には、硫酸鉄に過酸化水素を加えるフェントン反応によりヒドロキシラジカルを発生させ、ESR 装置により検出する方法を用いる。この実験系に PYC を添加し、ヒドロキシラジカルの消去能を抗酸化効果として評価する。さらに前年度行なった加齢ラットを用いた PYC 歯磨剤の骨吸収抑制効果について TRAP 染色による病理組織学的検索を行ない、歯周組織中の破骨細胞の出現についてコントロール群と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進行に合わせて必要に応じて研究費を執行した結果、当初の見込み額と執行額は異なった。研究計画に大きな変更はなく、次年度も継続して実験を行っていくため、実験動物や試薬類、ガラス機器やプラスチック器具などの実験消耗品の購入に計上する。また学会発表や論文報告の費用などにも使用する予定である。
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