ピクノジェノール(PYC)を歯磨剤に配合し口腔への応用性を検討している。平成 30 年度は前年度に行なった加齢動物を用いた PYC 歯磨剤の骨吸収抑制効果について、さらに詳細な検討を加えた。すなわち上顎骨歯周組織中における破骨細胞の出現について、EDTA 溶液による脱灰を行ない、通法に従って病理組織標本を作製後、TRAP 染色を行なった。上顎歯槽骨中に出現した多核の TRAP 陽性細胞を破骨細胞として顕微鏡下で細胞数を評価し、コントロール群と比較した。また、口腔バイオフィルムに対する PYC の浸透作用について、S. mutans や A. naeslundii、P. gingivalis を単一でカバーガラス上でバイオフィルム形成後、被験試料を 5 分間作用させた後、カバーガラスに残留したバイオフィルムを解析した。その結果、加齢動物を用いた PYC 歯磨剤の骨吸収抑制効果において、PYC 含有歯磨剤塗布群ではコントロール群と比較して28.3%の破骨細胞数の有意な減少が認められた(p<0.05)。この結果と、前年度に実体顕微鏡下で上顎骨頬側のセメント・エナメル境から歯槽骨頂部までの測定した歯槽骨吸収量との間に相関性が認められた。また口腔バイオフィルムに対する PYC の浸透作用においては、特に P. gingivalis バイオフィルムの減少が認められた。本年度はさらに PYC の抗酸化作用について ESR 装置を用いて評価を行なっていたが、反応系の確認と装置のメンテナンスに時間がかかったことにより実験開始が遅れたため、現在予備実験を行なっている。
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