研究課題/領域番号 |
17K18197
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
鈴木 周太郎 鶴見大学, 文学部, 准教授 (30635735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジェンダー / 教育 / 歴史学 / 女性の権利 / 共和国の母 / 女子教育 / 真の女性らしさ / アトランティック・ヒストリー |
研究実績の概要 |
近代的な教育システムが19世紀初頭に環大西洋圏で確立するなかで新たな「女性性」が定着していった過程を明らかにすることを目的とした本プロジェクトの1年目にあたる平成29年度は、研究実施計画にしたがって、(1)8月に米国マサチューセッツ州のAmerican Antiquarian Society等において、平成30年3月にニューヨーク州のNew-York Historical Society等において資料調査を実施し、(2)研究成果として単著一冊と研究論文1本を執筆した。 調査に関しては、研究計画のなかでもとりわけアメリカの女子学校において実践された教育と「女性性」の関係を明らかにするための資料の収集に重点をしぼっておこなった。そのためにスザンナ・ローソンとエマ・ウィラードらによる女子学校について調査した。そして、それらの学校の教育は建国期の女子学校と比較すると、より家庭との繋がりを強調し、「良き母」を育成するための教育という側面が強いことを検討した。以上を通じて、平成29年度の主要な課題であった資料収集について順調に計画を進めることができた。とりわけ、エマ・ウィラードがギリシャにおける女子教育の普及に尽力したことを示す資料を多く収集できたことは有益であった。 このようにして収集した資料をもとに鶴見大学紀要にエマ・ウィラード及び同時代の教育者キャサリン・ビーチャーについての研究論文を執筆した。そこでは建国期の「共和国の母」イデオロギーが、形を変えつつも19世紀の女子教育に受け継がれていることを明らかにした。また、3月には単著『アメリカ女子教育の黎明期 共和国と家庭のあいだで』(神奈川新聞社)を出版し、建国期から19世紀半ばのウィラードの学校に至るまでのアメリカ女子教育の歴史を概説し、研究成果を広く社会に公表するという目的を果たすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の本プロジェクトの1年目(平成29年度)は研究調査に重点をおくとしていた。実際に米国における資料調査を2度行うことができたことは、2年目以降の研究の遂行にとってとても有益なものであった。また、2年目の平成30年度以降の課題と考えていたスザンナ・ローソンの著作や教育にみられる女性性の変遷についての検討に必要な資料も多く得られたことは大きな収穫であった。また、成果の発表も当初から計画していた単著の出版に加えて、初年度から研究論文を公表できたことを考慮すると、全体としておおむね順調に進展しているといって良いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの1年目(平成29年度)におこなった資料調査をもとに、2年目の平成30年度以降は研究成果の発表により力を入れる。それに加えて、大西洋をまたいだ思想的交流を明らかにするという本プロジェクトの性質上、米国のみでの資料調査では限界があるため、英国ロンドンの大英図書館での研究調査も計画している。 平成29年度に研究代表者が出版した単著についての反応や助言を受けて、当時の英国やフランスにおける女子教育のより精緻な検討など、アメリカ一国に留まらない環大西洋的な視点の必要性をより痛感した。平成30年10月に学術雑誌に投稿する予定の論文においては、18世紀末の英米関係と女性性の変化との関連性を検討することで、ジェンダー史、教育史におけるグローバル・ヒストリーを提示することをめざす。
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