研究課題/領域番号 |
17K18197
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
鈴木 周太郎 鶴見大学, 文学部, 准教授 (30635735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジェンダー / 教育史 / 公教育 / 女子教育 / アトランティック・ヒストリー / 英米関係史 |
研究実績の概要 |
近代的な教育システムが19世紀初頭に環大西洋圏で確立するなかで新たな「女性性」が定着していった過程を明らかにすることを目的とした本プロジェクトの2年目にあたる平成30年度は、研究実施計画にしたがって、(1)平成30年8月に英国ロンドンのBritish Library等において、平成31年3月に豪州シドニーのState Library of New South WalesおよびThe University of Sydneyにおいて資料調査を実施し、(2)研究成果として研究論文1本を執筆した。 調査に関しては、研究計画のなかでもとりわけ19世紀前半英国の教育者ジョセフ・ランカスターの教育思想のアメリカへの受容を明らかにするための資料の収集に重点をしぼっておこなった。そのためにランカスターの教育思想と教授法について検討をおこない、ランカスター式教育を英国外に普及させることを目的とした機関であるThe British and Foreign School Societyについて調査した。そして、報酬を支払う必要のある教員を最低限に抑えることができるランカスターのモニトリアル・システムが、ニューヨークやペンシルヴァニアの貧困児童への教育システムとして積極的に取り入れられたことを明らかにした。以上のように、平成30年度の主要な課題であった資料収集について順調に計画を進めることができた。とりわけ、ランカスターの教育システムの英国外での受容についての具体的な資料を多く収集できたことは有益であった。このようにして収集した資料をもとに鶴見大学紀要にランカスター式のモニトリアル・システムのアメリカでの受容過程についての研究論文を執筆した。そこでは明治期日本における一斉教授式の学校教育の導入との比較検討もおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の本プロジェクトの2年目(平成30年度)は研究調査に重点をおくとしていた。実際に英国及び豪州における資料調査を2度行うことができたことは、3年目の研究の遂行にとってとても有益なものであった。また、最終年度である令和元年度以降の課題と考えていた、英国からアメリカへの教育思想の流れを明らかにするために必要な、19世紀オーストラリアの教育史に関する資料も多く得られたことは大きな収穫であった。研究論文を公表できたことを考慮すると、全体としておおむね順調に進展しているといって良いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの1-2年目(平成29、30年度)におこなった資料調査をもとに、最終年である令和元年度は研究成果の発表により力を入れる。それに加えて、大西洋をまたいだ思想的交流を明らかにするという本プロジェクトの性質上、米国および英国における研究調査も計画している。初年度(平成29年度)に研究代表者が出版した単著についての反応や助言を受けて、当時の英国やオーストラリアにおける公教育のより精緻な検討など、アメリカや英国一国に留まらない環大西洋的な(あるいはオーストラリアも含めたグローバルな)視点の必要性をより痛感した。令和元年10月に学術雑誌に投稿する予定の論文においては、19世紀前半のアメリカとオーストラリアの教育について、ランカスター・システムの受容状況の比較を中心に検討することで、教育史におけるグローバル・ヒストリーを提示することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成31年3月のシドニーでの資料調査を、当初予定していたよりも短い日程で行ったために、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 令和元年8月に予定しているフィラデルフィアにおける資料調査をより充実したものにするため、滞在日を2日増やすことによって使用する。
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