研究実績の概要 |
唾液腺腫瘍の病理組織像は多彩であり、組織学的形態では診断に苦慮することもある。近年、唾液腺腫瘍において特異的キメラ遺伝子が多く報告され、診断の一助となっている。申請者は以前より遺伝子異常による唾液腺腫瘍のサブグループ化を行うために、これまで、多形腺腫におけるPLAG1およびHGMA2遺伝子異常、多型腺癌におけるPRKD1,2,3遺伝子異常および腺様嚢胞癌におけるMYB-NFIB, MYBL1-NFIB特異的キメラ遺伝子に関してPCRおよびFluorescence in situ hybridization(FISH)法を施行し、遺伝子異常の有無と臨床病理学的な検討を行っている。現在、FISHおよび免疫組織化学、ヘマトキシリンエオジン染色の標本をもちいて細胞レベルでの相違を調べている。現在、PAC(多形腺がん),hybrid caricnoma、多形腺腫での遺伝子発現の違いを調べている。PACでは、PRKD1-ARD1Aキメラ遺伝子やPRKD1,2,3 split gene,DDX3X split geneを有する症例を10例程度見出した。これらの遺伝子異常の分布細胞レベルで詳細に調べている。また、hybrid caricinomaでは、唾液腺導管癌と扁平上皮癌、扁平上皮癌と大神経内分泌腫瘍を有する症例で腫瘍間での遺伝子異常の違いを検討している。これらの遺伝子異常以外にもがん抑制遺伝子p53や細胞周期関連遺伝子cyclin D1やサイクリン依存性キナーゼ阻害2Aなどの遺伝子異常の分布も調べている。もともと、希少癌であるため、症例数が少ないが、できる限り多くの症例を集めるため他施設からの協力も得ている。症例ごとに遺伝異常の細胞レベルで再確認することを予定している。
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