生物の正常な成長には厳密に制御された細胞の機能転換が必須である。本研究では根端での細胞機能転換の鍵となるUPB1の下流で働く転写因子MYB50の機能解析を通じて細胞の成熟に関わる細胞機能転換分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成29年度に得られた結果より、MYB50の標的遺伝子を4つに絞り込み、それら4つの遺伝子の過剰発現株・プロモーターレポーターを持つ形質転換体を作成した。それぞれが、MYB50の発現部位とよく似た場所で根で発現することがわかった。過剰発現株はT2世代を獲得することができた。 MYB50の上流のUPB1の発現を変化させることで、MYB50の下流遺伝子にも影響があるかをタイムコースリアルタイムqPCRにより調べた。その結果、UPB1の発現を薬剤で誘導するとそれに応じて、MYB50の発現が減少すること、かつMYB50下流遺伝子の4つのうち2つが有意に発現が減少することがわかった。この発現変動は薬剤処理の時間依存的であり、UPB1がMYB50の発現を抑制することにより引き起こされていることを証明することができた。これらの一つは細胞壁成分であるペクチンの分解酵素であるペクチンメチルエステラーゼで、もう一つは細胞伸長を制御するシグナルに関わるペプチドをコードする遺伝子である。以上のことから、MYB50が細胞壁組成を根端の伸長領域で変化させ、またペプチドの量を変化させることで、さらに下流にシグナルを伝達して細胞伸長に関わっていることが強く示唆された。 同時にMYB50の結合DNA配列をin vitroで決定するために、新規の迅速簡便転写因子結合配列決定法の確立も進めた。この方法により、テストを行なった結合配列が既知の転写因子のDNA結合配列を決定することができ、論文として投稿中である。
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