研究課題/領域番号 |
17K18224
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠也 豊田工業大学, 工学部, ポストドクトラル研究員 (90590117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲルマネン / グラフェン / X線光電子分光 / ラマン散乱分光 / チップ増強ラマン散乱 / エピタキシャル成長 / 単原子層物質 |
研究実績の概要 |
初年度はSi基板上に堆積させたAu、Ag、およびAu/Ag薄膜からGeを析出させ、原子層レベルの極薄膜を制御して析出させることとと、ゲルマネン形成の検出方法の検討を行った。 まず、AuとAg薄膜からのGe析出を検討した。Si基板上に真空蒸着でAg/GeまたはAu/Ge薄膜を堆積させ、Ge析出基板とした。Ag/Ge薄膜ではレーザー照射(532 nm)により、Au/Ge薄膜では加熱によりGeの表面析出と結晶化が起こることが分かった。Au/Ge薄膜の加熱の方が容易かつ均一にGe結晶化が起こることが分かったため、Au/Geで表面のGe結晶化が起こる加熱温度と加熱時間の依存性を調べた。 続いて極薄膜のGeを析出する手法を検討した。X線光電子分光(XPS)の結果から、Au/Ge薄膜では室温でもGeが表面へ拡散することが分かった。室温での拡散は蒸着装置の真空層から大気へ取り出す際にGeの酸化を引き起こすため望ましくない。そこで、AgのGe固溶度がAuよりも高いことに着目し、薄膜の構成をAu/Ag/Geへ変更した。XPSにより蒸着後の表面を元素分析したところ、Au/Ag/Ge薄膜では室温での表面へのGe拡散が抑制されることが分かった。このAu/Ag/Ge薄膜を用い、Ge膜厚を1nm以下に薄くすることで、1~4原子層程度の範囲で極薄のGe析出が可能であることを明らかにした。 また、表面に析出したGeがゲルマネンか、ダイヤモンド格子の結晶かを調べるために、XPS、ラマン散乱分光、チップ増強ラマン散乱分光による測定を行ってきたが、現状ではゲルマネンを識別する有効な測定手法が見つかっていない。ゲルマネン形成を明らかにするため、走査型トンネル顕微鏡による直接観察や、放射光設備の利用、角度分解光電子分光などの測定に取り組むことを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲルマネンの検出手法としてラマン散乱分光、およびチップ増強ラマン散乱が有効だと期待していたが、実際に析出したGe結晶とバルクのGe結晶のラマンピーク位置の違いは僅か(2~3 cm-1)であり、ゲルマネン形成の判別が難しいことが分かった。また、その場加熱XPSによる測定を詳細に行ってきたが、現状ではゲルマネン形成を示す明確なピーク位置の化学シフトは確認できていない。以上のように、ゲルマネン形成の判別法が確立できていないため、進捗状況に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、ゲルマネン形成の判別が難しいという課題があるが、詳細なその場加熱XPSの結果から、1~4原子層程度の範囲でのGeの析出量制御が可能になった。今後はGe析出量を単層~2層程度の範囲に限定してゲルマネン形成の判別を行っていくことで遅れを取り戻す。 また、走査型トンネル顕微鏡や、放射光設備、角度分解光電子分光などの測定も取り入れるとともに、ゲルマネン形成がうまくいかない場合は当初の計画通り、CuやAlなど別種の金属を薄膜を用いた析出に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の消耗品購入に充当する。
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