研究課題/領域番号 |
17K18226
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
及川 弘崇 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (00732041)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | GUS-D6 / コンドロイチン硫酸プロテオグリカ ン / 筋萎縮性側索硬化症 / 酵素療法 |
研究実績の概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルラットにおいて、運動神経の主病変部位にコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の進行性の沈着が起こる事が報告されている。そして運動神経へのCSPGの沈着は、神経突起伸長を阻害し、神経回路網の再構築を妨げる事が知られており、ALS病態発現の一旦を担っていると考えられる。生体内でのCSPG分解酵素としてβ-グルクロニダーゼ(GUS)が知られているが、申請者らは天然型のGUSよりも3倍中枢神経系へ移行するGUS-D6を開発した(Oikawa H, et al. Mol Genet Metab. 2008)。本研究では、CSPGを標的とした薬剤によるALS性神経障害の治療方法の確立を目的としている。 初年度はGUS-D6の神経細胞への影響解析をするために、天然型のGUSの神経細胞への影響解析を培養実験で検討した。マウス脊髄由来神経芽細胞腫であるNeuro-2aに対して、5,000 U/gのGUS投与群と非投与群の2群に分けて、1, 10, 100, そして 1,000 μg濃度のCSPG条件下で培養を行なったところ、GUS投与によりCSPG適用による培養細胞の細胞体減少が抑制された。また、GUS投与群で神経細胞マーカーであるMAP-2の陽性タンパク質の増加と軸索様形態が観察された。これにより、GUS-D6の神経細胞への有用性の影響解析が可能となった。一方で、GUS-D6は市販されている酵素ではなく、我々の研究グループのみ所持するものであり自主精製が必要である。現在、GUS-D6オリジナルを持つアメリカの研究室よりベクターを輸入し、CHO-K1細胞にヒトGUS-D6を遺伝子導入をおこない、GUS-D6酵素生成細胞作成に着手している。また、本研究に必要な量の酵素を得るため、その細胞の培養に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目的では、(1)GUS-D6酵素精製サイクルを申請者の所属研究室で立ち上げ、本研究終了までに必要となる酵素を精製し蓄積することと、(2)GUS-D6の神経細胞への有用性をin vitro解析により証明することであった。そして、研究申請時にGUS-D6オリジナルを持つアメリカ合衆国DuPont Hospitalの戸松俊治教授からベクターの譲渡許可を得ており、日本への移譲予定であった。しかしながら、本研究計画申請後にアメリカ合衆国大統領が変ったことにより、組み換え遺伝子を持つベクターといったような生物学的資源の移譲や分譲の規則が厳しく変更になったため、ベクター入手までに予想以上の時間がかかった。よって、進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GUS-D6の酵素精製を最優先課題とする。また、天然型のGUSの神経系細胞への影響は確認できているので、GUSの酵素活性を有するGUS-D6の神経系へ及ぼす影響について神経突起伸長マーカー(Gal-1,GAP43)や樹状突起マーカー(MAP-2)をウエスタンブロット法(WB)や免疫染色法(IHC)によって精査する。Neuro-2aを用いた、CSPGによる神経突起伸長阻害モデルはおおよそ確立できており、GUS-D6酵素精製サイクルの樹立により、初年度研究計画と次年度研究計画を随時検討可能であり、本研究目的は十分に達成可能である。本研究目的の達成のため、酵素精製細胞のリクローニングを行い、酵素活性の高いGUS-D6産生株を選出し、精製酵素の質の維持を行う。また、前臨床試験を行うためにALSモデルマウスが必要となるが、出生後4ヶ月後よりALS症状を発症するため、10月以降にモデルマウスに薬物投与実験が行えるように動物の準備を行う。以降は当初予定の通り、1,000 U/g、2,500 U/g及び5,000 U/gのGUS-D6を用いて、6日間の治療計画で、静脈投与を①初日単回投与した群、②3日間隔で投与した群(2回投与群)、③2日間隔で投与した群(3回投与群)の3群に分けて行う。その後、屠殺解体し脊髄検体を採取し脊髄中のGUS酵素活性をGUSアッセイキットにより測定する。そして投与数または投与量が少なく、脊髄中に高いGUS-D6活性のある条件を確定し、最終年度での投与計画を確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
GUS-D6オリジナルベクターの輸入譲渡に遅延が生じたため、酵素精製に関する次年度使用が生じた。本年度はCHO-K1細胞への遺伝子導入と細胞培養に着手しているため、酵素精製を開始可能である。したがって酵素精製に必要なフラクションコレクター(Bio-Rad: 741-0002JA)やグラディエントポンプ(Bio-Rad: 731-9001JA)の購入を予定している。
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