研究課題/領域番号 |
17K18235
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
園田 耕平 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 助教 (90638628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 群れ行動 / 動物行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、群れの平均化と個体間相互作用の両立による「情報伝播波機構」の分野横断的な実装である。 本年度はまず、本研究のキッカケとなった理論モデルについて完成させた。従来の群れ行動の理論では、誘引・整列化・忌避などの規則は全て平均化相互作用を暗黙的前提としている。これはノイズの拡散が抑えられるため、群れの維持や安定性が非常に高くなる利点がある。しかしながら、群れ行動に本質的で重要な情報伝播が遅くなる。一方で、本研究が導入する個体間相互作用は平均化と相反する側面をもち、ノイズに弱い部分もあるが、速い伝播が可能である。本研究のモデルは、その相反する「平均化相互作用」と「個体間相互作用」を両立し、動物の群れにおいて観測される高速情報伝搬を実現させた。 このモデルについて、論文執筆を行い、海外雑誌に論文投稿をした。しかしながら、査読プロセスが難航した結果、不採択となった。この論文については、次年度において再投稿をする予定である。 さらに、共同研究者らとともに、「動物の心」というテーマで論文執筆を開始した。研究者は、章の1つを担当し、「群れの意識」について執筆している。動物の群れの動きは古来より人々の関心を引きつけており、たとえば、何万羽のムクドリの群はさながら「1つの意識をもった生き物のようだ」と表現される。研究者は、独自に構築した理論モデルから「なぜ群れが意識をもったように感得されるのか」を平易な言葉をもちいて考察した。本論文は、動物行動学の長年のテーマとされた「動物の心」に対して、実験的な論証を示しながら、挑戦的な考察を行ったものである。 論文はほぼ完成していたが、本年度中には論文投稿を行えなかったため、次年度に投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの学術論文の執筆を行ったが、不採択や未投稿であるため、研究実績に反映できなかったため。 年間計画として、論文執筆を優先したため、研究発表が後回しになっていた点が本年度の最大の反省点である。 また、エフォートとしては当初予定していたとおりであったが、本研究課題のサブ課題を並行して進めることができなかった点を次年度以降に改善したい。
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今後の研究の推進方策 |
すでに執筆している複数の論文について、海外雑誌に投稿し、採択までに至る予定である。 また、それと並行して、研究成果に関する発表を積極的に行っていきたい。小さい成果でも、国内の学会で発表しながら、フィードバックをもらうというサイクルをつくっていきたい。 さらに、すでに構築されている2つめの理論モデルについて、シミュレーションと解析を完成させ、発表したいと考えている。 なお、本年度の論文投稿の際に得られた「教訓」は、査読者との「科学的な思想の違い」と思えるものを感じた点である。本研究の理論モデルは、おもに動物の知覚のあり方から着想したもので、いわば心理学を背景としている。しかしながら、査読者はおそらく物理学者であったため、丁寧な議論を行っても、議論が並行してしまった。「コミュニケーションの問題」なのか、「査読者の選択の問題」なのかも検討が必要である。また、本研究の領域が複合領域でもあり、この問題は常にあるため、研究発表における戦略も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初の計画と変更して、2つの論文執筆を優先させたため、当初の助成金の使用計画に変更が生じた。 次年度は、本年度に行えなかった国内学会の発表や情報収集のための旅費やシミュレーションのデータ解析の人件費に支出する予定である。
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