最終年度は,本研究課題の目的「フィルタリング精査」を重視し,当初から検討していたフィルタリングパラメータを個別的/総合的に分析し,パラメータの適切性や必要性について追究した.具体的には,データ収集実験と同時に目視で観測したバス利用客の実測人数を正解データとして,各種パラメータによるフィルタリング結果との相関関係を分析した.実験環境として,周囲にWiFi通信機が少ない大学キャンパスのバス停留所と,交差点や建造物によるノイズが多い街中のバス停留所で比較分析を行った. その結果,いずれのバス停においても,収集したデータ全てを対象に推定した場合よりも,フィルタリング手法を適用することで,推定精度が予想通り向上することが確認できた.特に街中では,周囲のノイズが多くパラメータ設定が不十分なため高い精度は見込めなかったが,フィルタリング手法を適用することで大幅に結果が改善されることが分かった. また,個々のパラメータを精査したところ,WiFi電波強度や短時間検出によるフィルタリング処理が推定精度向上に大きく貢献していることが分かった.一方,検出回数は検出時間と重複し,バス停留所周辺を往復する歩行者も少ないため,検出回数は比較的不要なパラメータであることも分かった.更に,ノイズの多い街中の停留所では乗客の列の並び方や周辺環境が異なるため,パラメータを変更することで結果が改善されることも分かった. 当初の計画では,プロトタイプシステムによる実験も目指していたが,勤務先異動による研究実施体制や実験環境変更により,進捗が遅れた.しかし,異動先では本課題と類似した手法で対象物を検出する研究に取り組み,データサイエンスにも精通した研究環境に恵まれたため,新たな知見も得られた.その経験を活かして今後も研究を進め,より実効性のあるシステム構築を目指したいと考えている.
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