2019年度は1件の学会誌論文の掲載,3件の国際学会発表,および1件の国内学会シンポジウム開催という成果であった。学術誌論文では感情状態が洞察問題解決および閾下呈示された手がかりの利用に及ぼす影響を調べた実験論文がJapanese Psychological Researchに掲載された。国際学会発表としては,認知コントロールの強弱が潜在手がかりの利用方法を規定することを示す実験成果をICPS2019およびICCS2019で発表した。加えて,日本心理学科にて,創造的思考の潜在過程に関する公募シンポジウムを開催し,基礎研究および応用・臨床研究とのコラボレーション企画を行った。 実験成果としては,昨年度に引き続き精神障害傾向のパーソナリティである統合失調型および軽躁病性パーソナリティと,洞察課題における潜在手がかりの利用との関連を調べる実験を行った。いずれのパーソナリティでも,その傾向が強い参加者ほど洞察課題の成績が高いものの,潜在手がかりを呈示されると,かえって成績が低下するという結果が得られた。 また,過年度に実施したもののサンプル数が十分に集まっていなかった実験として,解決者の覚醒水準の高低が閾下呈示された手がかりの利用に及ぼす影響を調べる実験を追加で行い,前回と同様の結果が再現された。すなわち,覚醒水準が高い参加者に手がかりを閾下呈示すると,解の発見がかえって阻害され,解決率が低下するという結果であった。この結果は2020年度に開催される国際学会にて発表予定である。
|