研究課題/領域番号 |
17K18239
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川村 仁子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (40632716)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先端科学・技術 / グローバル・ガバナンス / トランスナショナル・ガバナンス / 官民パートナーシップ(PPP) / ナノテクノロジー / バイオテクノロジー / グローバル・ロー / AI |
研究実績の概要 |
2020年度はCOVID-19の感染拡大により、当初予定していた研究計画を大幅に変更することとなった。前半はCOVID-19の感染拡大に関わる校務のために多くの時間を割くことになったが、本研究の資料収集を行い、また、本研究にも関係するデモクラシーに関する論文を執筆し、2021年3月にミネルヴァ書房から出版された『プライマリー国際関係学』の第5章として公表できた。 後半は、資料収集とオンラインによるインタビューを行うとともに、先端科学・技術の研究・開発の促進とリスク管理の双方を両立させるためのガバナンスにおいて重要となる点を理論的および制度的側面から分析した。そして、科学的研究の自由は権利として保障されているが、先端科学・技術が人間や社会に及ぼす予測可能な、あるいは予測不可能なリスクへの有効な対策を行うため、また、明確なガバナンスの欠如による不安定な状況が先端科学・技術の研究・開発や商業化を妨げることから、先端科学・技術の研究・開発とリスク管理を両立させるガバナンスが早急に必要であることを論証した。特に、既存の制度や法で対応可能か、あるいは新たな制度や法が必要かを見極めるためにも、対象となる先端科学・技術の定義が必要であることや、研究・開発の段階と実用化・商業化の段階に分け、対象となる科学・技術のリスクの評価とそれに応じた新たな制度や規範のための諸原則を見出すことができた。さらに、官民パートナーシップを中心とした、将来的な先端科学・技術分野のグローバルなガバナンスの可能性についての提案を行った。 これらの研究成果は、「先端科学・技術のガバナンスー研究・開発のためのリスク管理の枠組みー」と題する論文にまとめ、2020年10月24日に開催された日本国際政治学会の部会で発表した。現在は、研究計画を立て直し本研究プロジェクトの成果の公表を兼ねた、『国際秩序論』の執筆を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、COVID-19のパンデミックにより、前年度より先方の都合で延期になっていたヨーロッパの諸機関を訪問しての資料収集・関係者へのインタビュー、対面での国際ワークショップを開催することができなかった。その意味で本研究計画は、やや遅れていると言わざるを得ない。 しかし、本研究の内容自体は遅れているわけではなく、欧米の研究者や関係者とのメールでのやりとりやオンライン上でのディスカッションを行えたことにより、可能な範囲で資料・情報収集ができ、本研究にかかわる新たな知見を得ることができた。 また、COVID-19の世界的なパンデミックへの国際機関、あるいは各国による政治的な対応や、科学・技術的な政策などは、本研究のテーマとする科学・技術ガバナンスにとって大きく関わるものであり、それらを分析することによって、より本研究の内容を深め、さらなる課題を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、これまで本研究プロジェクトのなかで得られた研究成果を公表するために、研究協力者である龍澤邦彦立命館大学名誉教授と『国際秩序論』を執筆・出版(晃洋書房から2021年12出版予定)する。 グローバル化や科学・技術の発展、昨今のCOVID-19のパンデミックによって、これまでの国際関係の基盤であった人間社会の価値観が揺らぎ、国際秩序の支柱となってきた主権や内政不干渉の原則、人権といった概念にまで変化が生じるなかで、国際秩序はどのように定義され機能しているのか、また、どのような権力がいかにして秩序を形成しているのか、それは既存の秩序とどのような関係なのかを法学的・政治学的視点から明確にする。そして本書の中で、本研究の成果公表として、これまでの人類の歴史において築き上げられてきた人間や社会の価値の問題に踏み込みつつ、私たちの社会が科学・技術をいかに受容し、それをいかに利用し、管理し、ガバナンスするのかについて論じる。 また、分担執筆する松下冽立命館大学名誉教授編著『グローバル化する新自由主義の暴力的表層と深層』の原稿や、山下範久教授編著『よくわかるグローバリゼーション論』の原稿のなかでも、本研究の成果を盛り込むとともに、本研究によって得られた成果をもとに、本研究プロジェクト終了後の次の研究プロジェクトの足掛かりとなる課題についての論文を発表する予定である。 COVID-19の状況次第では、延期になっているR.オースターリンク博士(欧州宇宙機関顧問)を招聘して、あるいはオンラインでの国際ワークショップを開催することも企画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、COVID-19のパンデミックにより、前年度より先方の都合で延期になっていたヨーロッパの諸機関を訪問しての資料収集・関係者へのインタビュー、対面での国際ワークショップを開催することができなかった。それゆえ、次年度使用額が生じた。 2021年度は、これまで本研究プロジェクトのなかで得られた研究成果を公表するために、研究協力者である龍澤邦彦立命館大学名誉教授と『国際秩序論』を執筆・出版(晃洋書房から2021年12出版予定)する。次年度使用額は、本書執筆・出版のための費用に当てる。また、本研究によって得られた成果をもとに、本研究プロジェクト終了後の次の研究プロジェクトの足掛かりとなる課題についての論文を発表する予定である。それに関わる費用にも使用する計画をしている。 COVID-19の状況次第では、延期になっているR.オースターリンク博士(欧州宇宙機関顧問)を招聘して、あるいはオンラインでの国際ワークショップを開催することも企画している。その際は、優先的に次年度使用額を使用する予定である。
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