研究課題/領域番号 |
17K18240
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
波多野 亮 立命館大学, 薬学部, 助教 (60521713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ERMタンパク質 / 溶質再吸収 |
研究実績の概要 |
本研究課題では足場タンパク質エズリンが腎尿細管での溶質再吸収において果たす役割を明らかにすることを目的としている。エズリンはERM(ezrin-radixin-moesin)タンパク質ファミリーに属しており、これらの3種のタンパク質では機能的な重複も示唆されている。本研究課題の推進にあたり、ERMタンパク質の一つであるモエシンの腎臓における機能について欠損マウスを用いて解析し、エズリン欠損マウスとは異なる表現型を示すことを新たに明らかにし、Pflugers Archivに報告した。また、エズリンは腎臓内において溶質再吸収に関わる近位尿細管と糸球体の足細胞に豊富に発現している。これまで糸球体の足細胞における役割についても不明な点が多かったが、基礎状態におけるエズリンの欠損による糸球体足細胞への影響は見られず、近位尿細管での溶質再吸収に与える影響は小さいことが判明した。一方で、近位尿細管での低分子量タンパク質の再吸収がエズリンノックダウンマウスにおいて低下していることが判明し、これらの結果についてはScientific Reportsに報告した。これらの研究成果をもとに、現在エズリンノックダウンマウスを用いて、Fanconi症候群(Dent病)の原因となりうる分子機構についての解析を進めている。エズリンノックダウンマウスではこれまでに判明しているリン酸、更に低分子量タンパク質の再吸収異常に加えて、アミノ酸、グルコース再吸収にも異常をきたしていることが判明しており、詳細な解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行にあたり、腎糸球体足細胞におけるエズリンの機能的役割が近位尿細管細胞におけるエズリンの役割と異なることが明らかになっている。これは細胞種によって異なる役割をエズリンが担っていることを示唆している。本研究で近位尿細管におけるエズリンの役割を解析する上で、糸球体足細胞でのエズリンの欠損自体はほとんど影響がないものと考えられる。また他のERMタンパク質による代償性機構などについても考慮する必要があるが、モエシンの欠損マウス、ラディキシンの欠損マウスでは異なる表現型が見られており、エズリン欠損マウスにおいても代償的な発現上昇なども見られないことから、こちらに関してもエズリンノックダウンマウスを用いた解析を進める上でほとんど影響しないものと考えられる。このような基礎的情報を固め、エズリンノックダウンマウスを用いてエズリンによる近位尿細管溶質再吸収機能への影響を解析する基盤が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
エズリンの尿細管溶質再吸収機能調節における役割について、in vivoでの解析を進めるとともに、in vitroでの詳細な分子機構解析が必要不可欠であると考えている。いくつかの近位尿細管由来培養細胞株を用いて機能解析を試みているが、近位尿細管の機能を十分に有した培養細胞はなかったため、初代培養法に切り替えて解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度申請額より物品費が2,197円繰越となったのは、実験にかかる費用が予定よりも少額で済んだことによる。2年目の本年度は繰越し金も含めて研究の遂行のために利用する予定である。
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