研究課題
本研究課題において、Dent病を含むFanconi症候群の原因となる腎尿細管溶質再吸収異常に関わるメカニズムの解明を試みた。研究開始当初より細胞骨格系の足場タンパク質の一つであるエズリンの欠損が腎臓の近位尿細管におけるリン酸再吸収輸送体の刷子縁膜側発現の低下を示すことから、エズリンが近位尿細管の様々な溶質輸送に関わるトランスポーターの発現や細胞内輸送の制御に関わっている可能性を想定していた。エズリンのノックダウンマウスを用いたin vivoの研究では腎糸球体濾過機能には異常がない事を新たに確認した。エズリンノックダウンマウスは糸球体傷害を伴うような刺激に対して抵抗性を示すことを発見しており、通常尿中には血漿タンパク質が漏出しにくいものと考えられた。しかし、Fanconi症候群においてみられるような低分子量タンパク質の尿中漏出が認められ、近位尿細管での再吸収に異常が生じていることが考えられた。また、尿中へのアミノ酸の漏出なども確認しており、エズリンを欠損することで近位尿細管での溶質再吸収が障害され、Dent病様の表現型を示すことが明らかとなった。腎皮質の刷子縁膜画分を精製し、LC-MS/MSによるプロテオーム解析を行ったところ近位尿細管に発現する様々なトランスポーターの発現レベルが低下していることが判明した。すでに報告しているリン酸トランスポーターだけでなく、アミノ酸、糖、有機酸などの再吸収や分泌に関わる様々な膜輸送体分子の発現が低下していることが判明している。更にエズリンは細胞内小胞輸送に関わる分子の局在制御に関わっているものと考えられ、エズリンの欠損は腎近位尿細管におけるそれらの分子の細胞内小胞への動員が抑えられることでトランスポーターを含む膜輸送体分子の局在異常、溶質再吸収障害を伴うものと考えられる。
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