研究課題/領域番号 |
17K18241
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 量 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (20587753)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 満洲引揚者 / 戦後日本 / 日中関係 / 記憶 / 表象 / 会報 / 女性 / オーラルヒストリー |
研究実績の概要 |
2019年度は、満洲引揚者よって編纂された会報の調査と分析を継続し、これまでの研究成果の一端をまとめた編著を刊行した(佐藤量・菅野智博・湯川真樹江編『戦後日本の満洲記憶』(東方書店、2020年3月))。編者を務めた佐藤は、「序章」(1-16頁)および、佐藤量「女学生の満洲記憶―大連弥生高等女学校同窓会誌『弥生会々報』の分析から―」(225-252頁)を執筆した。 満洲引揚げ関連資料については、前年度から継続している大連弥生高等女学校の同窓会誌『弥生会々報』の記事目録の作成を行なった。とりわけ、1972年の日中国交回復以降の同窓会会報からは、満洲へのノスタルジアと加害者としての意識が交錯する女学校出身者の葛藤が確認された。 また2020年3月には、これまでの研究成果の一端をまとめ、佐藤量・菅野智博・湯川真樹江編『戦後日本の満洲記憶』(東方書店)として刊行した。本書では、戦後日本社会において満洲がどのように記憶されてきたかについて、満洲引揚者およびその二世が刊行した「会報」を分析した。本書では、①満洲引揚者の戦後史に即しながら、植民地体験が忘却されていくメカニズムを考察し、②満洲引揚者が記憶を記録するという営みを通じて、その忘却に抵抗してきたことを明らかにした。本書を通して見えてきたことは、戦後日本社会から満洲の記憶が消えていくことに抵抗するように、自分たちの歴史を残そうとしてきた引揚者の戦後史である。それは単に満洲を肯定的に捉えるようなノスタルジアだけが通底しているわけではない。引揚者にとっての戦後史とは、満洲が忘却されていくことへの抵抗の歴史といえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
継続的な資料調査の実施および研究成果としての著作の刊行など、概ね計画通りに研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き満洲引揚者関連の資料調査を継続する。また、女学校の同窓会会報の記事目録を完成させる。さらに、満洲の女性をめぐる生活文化やジェンダー問題について調査・分析を展開し、今後の研究の礎とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、2020年3月に実施を予定していたフィールド調査を行うことができず、年度内の研究を完了することができなかった。そのため、次年度にフィールド調査を実施する計画である。
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