研究課題
若手研究(B)
本研究では、これまで十分に知られていなかった満洲引揚者の戦後史に注目し、引揚者がどのように戦後日本社会に定着していったのかについて、引揚者へのインタビューと史料分析から考察した。その結果、引揚者たちは互助組織を形成し、住宅や再就職の斡旋など独自のコミュニティで情報共有しながら生活再建を図っていったことが明らかになった。本研究の成果の一端をまとめ、佐藤量・菅野智博・湯川真樹江編『戦後日本の満洲記憶』(東方書店、2020年)として刊行した。
歴史社会学
本研究の学術的意義は、引揚者同士でのみ共有されてきた会報の史料的価値を掘り下げたことにある。また、従来の満洲研究では戦前に焦点を当てた研究が多かったが、引揚者の戦後史に焦点をあてて満洲経験をめぐる記憶のあり方を検討したことも本研究の独自性である。本研究の社会的意義は、いまだに日本と東アジア諸国の間であいまいなままになっている歴史認識問題を考える手がかりになる点である。