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2018 年度 実施状況報告書

戦後日本におけるアブノーマルなセクシュアリティと近代化/反近代化論

研究課題

研究課題/領域番号 17K18242
研究機関国際日本文化研究センター

研究代表者

河原 梓水  国際日本文化研究センター, 研究部, 日本学術振興会特別研究員(PD) (70726017)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード奇譚クラブ / サディズム / マゾヒズム
研究実績の概要

本研究はこれまで研究対象とされてこなかったアブノーマル性風俗雑誌『奇譚クラブ』の1950年代のテクスト群を主たる分析対象とし、サドマゾヒズムを媒介とすることで行われた近代化論・反近代化論の展開を明らかにすることを目的とする。
本年度は、研究実施計画に基づき、第2の課題に関する検討を進めた。年度前半は前年度に収集した『あまとりあ』、『生心リポート』、『夫婦生活』、「キンゼイ報告」に言及する雑誌記事等と、ヨーロッパ精神医学の動向を照らし合わせ分析を行なった。来年度は本成果を論文として取りまとめる予定である。
次に、これまでに明らかにした村上信彦によるサディズム論が、1980年代以降米国で展開したフェミニスト・セックス戦争におけるいくつかの論点を大幅に先取りしていることを踏まえ、米国で最も大きな争点の1つであった女性のマゾヒズムについて、村上がいかに論じているのかを検討し、その議論に対するマゾヒストからの批判を分析した。論文としてとりまとめ、現在査読の過程上にある。
上記の検討から、村上は愛好当事者でありながら、サディズムを野蛮な原始本能、女性のマゾヒズムを抑圧によって生じた病とみており、サディズム・女性のマゾヒズムがいずれも前近代性と結びついていたことが明らかになった。サディズムとマゾヒズムはフロイト学説以降しばしば一対の概念とみなされてきたが、戦後日本においては全く起源の異なるものと理解されていた。とするならば、加害行為ではなく、封建制の残滓でもない男性のマゾヒズムは、これらとは根本的に異なる概念であったと考えられる。そこで次に、戦後の男性にとって、マゾヒズム概念とはいかなる役割を果たしていたのかという点について、沼正三「家畜人ヤプー」の分析を通じて検討した。本成果は論文集の1章として執筆し、現在印刷中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実施計画通りに研究を進展させることができたため。

今後の研究の推進方策

今後も研究実施計画に基づき、研究を進めていく予定である。来年度は、前半においてはドイツ国・ベルリンにおける現代BDSMカルチャーのフィールドワークを行ないつつ、前年度の成果を論文として執筆する。後半は、日本において資料を調査し、フィールドワークの成果とあわせて論文としてとりまとめる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] カストリ雑誌時代の『奇譚クラブ』2020

    • 著者名/発表者名
      河原梓水
    • 雑誌名

      石川巧編『「カストリ雑誌」総攬』

      巻: - ページ: 印刷中

  • [雑誌論文] マゾヒズムと戦後のナショナリズム―沼正三「家畜人ヤプー」をめぐって―2019

    • 著者名/発表者名
      河原梓水
    • 雑誌名

      坪井秀人編『戦後日本文化再考』、三人社

      巻: - ページ: 印刷中

  • [学会発表] Democracy, Feminism and Sadomasochistic Desire in Post-war Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Azumi Kawahara
    • 学会等名
      International Conference on Sexuality 2018: Health, Education and Rights(タイ国バンコク市)
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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