研究課題/領域番号 |
17K18244
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
谷口 祐一 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (00782757)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FGF21 / 脂肪肝 / 内臓脂肪蓄積 / 隠れ肥満 / 大豆タンパク質 |
研究実績の概要 |
運動不足による肝内脂肪の増加により生じた、熱産生ホルモンFibroblast growth factor 21 (FGF21)の抵抗性が隠れ肥満の原因であることが示唆されている。従って、肝臓の脂質代謝を高める保健機能食品によりFGF21抵抗性を改善することで、隠れ肥満の解消につながることが期待できる。 本研究は脂肪肝モデル動物を用いて、①肝内脂肪の増加が内臓脂肪におけるFGF21抵抗性につながることを解明し、②肝脂質代謝を高める機能食品成分(大豆タンパク質など)がFGF21抵抗性を改善する効果を検証する。さらに食事介入試験により、③機能性食品によるFGF21抵抗性の改善作用を証明することで、隠れ肥満の原因を食事により解消する方法を明らかとする。 本研究計画では、まず脂肪肝を示す動物実験を用いて、血中FGF21濃度および関連遺伝子発現解析を行い、肝内脂肪の増加が脂肪組織に及ぼす影響を検証した。検証の結果、肝内脂肪の増加に伴う血中FGF21濃度の増加が、内臓脂肪組織における熱産生の亢進につながらないことを明らかとした。 さらに肝脂質代謝を高める大豆タンパク質が、FGF21代謝に及ぼす影響を検証したところ、肝内脂肪の増加により生じる血中FGF21分泌リズムの欠失が、大豆タンパク質摂餌により抑制されることを証明した。加えて、大豆タンパク質を摂餌したマウスにおいて、内臓脂肪蓄積が抑制されることを明らかとしている。 これらの研究結果は、脂肪肝に起因するFGF21代謝異常が、内臓脂肪蓄積(隠れ肥満)と関係することに加えて、肝脂質代謝を高める食品を摂取することが、隠れ肥満の解消に役立つ可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の進捗状況は、概ね予定通りである。これまでに、脂肪肝を示す実験動物を用いた検証実験により、肝内脂肪の増加に伴う血中FGF21濃度の増加が、内臓脂肪組織における熱産生の亢進につながらないことを明らかとしている。加えて、肝脂質代謝を高める大豆タンパク質が、FGF21抵抗性を改善する効果の検証を行い、肝内脂肪の増加により生じるFGF21分泌リズムの欠失が、大豆タンパク質摂餌により抑制されることと、内臓脂肪の蓄積を予防することを明らかとしている。現在、これらの研究成果について、学会発表ならびに論文発表の準備を進めている。 また実験動物を対象とした検証において、FGF21代謝が大豆タンパク質摂取と関係している可能性が示唆されたことから、健常者、脂質異常症患者、および一型糖尿病患者を対象とした血中FGF21濃度解析ならびに食事調査を行い、食事に占める大豆タンパク質摂取量が血中FGF21濃度に及ぼす影響について検証を行っている。現在、取得したデータについて解析を実施しており、研究成果が揃い次第、学会発表ならびに論文発表を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究成果から、脂肪肝により生じたFGF21代謝異常が隠れ肥満と関係する可能性が示唆された。今後、ヒトを対象として、機能性食品がFGF21およびエネルギー代謝に及ぼす影響を検証することにより、具体的な隠れ肥満を予防・解消する栄養学的手法を明らかとすることを目指す。 研究最終年度である本年は、ヒトを対象とした食事介入試験を予定しており、既に倫理委員会における審査を受けている。本研究は、肝脂質代謝を高める機能食品成分が、血中FGF21濃度および体脂肪分布に及ぼす影響を明らかとすることに加え、サーモグラフィーを用いて褐色脂肪活性を測定することで、エネルギー消費量の増加が生じる部位について検証を行う。 本研究成果は、代謝性疾患の主な原因の1つである内臓脂肪蓄積へ対抗する手段を解明することにより、機能性食品の利用の促進ならびに疾病予防につながる知見となることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属が変わったことで、ヒト介入試験の開始が遅れたために次年度使用額が生じた。研究計画最終年度におけるヒト介入試験の準備は既に着手しており、次年度の研究費の使用について特に問題は無いと考えられる。
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