研究課題/領域番号 |
17K18245
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
今枝 美和 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 特任講師 (20587513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鍼通電刺激 / 腱修復 / スポーツ傷害 / アキレス腱断裂 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
2020年の東京オリンピック開催が決定して一層、スポーツへの関心が高まり、各種の競技人口の増大が予測される中、スポーツ障害・外傷の発生率の増加が懸念される。とりわけ、アキレス腱をはじめとした腱の断裂(不全・完全)は従来、スポーツ活動中の発生頻度が高く、その予後において重大な合併症を来すことも少なくないことから、発生後の処置、治療法に関して様々な検討が行われている。そのような中、申請者らはこれまでに、ラットのアキレス腱断裂処置後モデルを用いて鍼通電刺激の影響を検討し、腱修復に促進的に作用する可能性を示唆する結果を得てきた。腱の修復過程に与える鍼通電刺激の有用性について詳細を明らかにすることは、鍼治療の応用範囲の拡大、延いては鍼灸の発展に寄与し、何より、医学における治療法の選択肢の充実に貢献する可能性が期待できる。そのため、近近の課題と考え、本研究では、鍼通電刺激が腱修復過程の何れの時期に如何なる影響を与えるかという点について検討することを目的とした。腱の修復は断裂後、炎症期、修復期、再造形期を経て完成する。そこで本研究では、修復過程の早期、つまり炎症期と、再造形期を終え、修復が完了した時期、それぞれについて組織学的、力学的な観点からの考察を計画した。そして、これまでのところ、①安定したアキレス腱断裂モデルラットの作製方法を確立し、②断裂後早期から再造形期まで長期に亘り、断裂部に鍼通電刺激を継続的に与えることにより、修復が完了した時期の腱の力学的強度を増大させることを明らかにした。さらに、これらの結果を広く発信するため、英文雑誌に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、鍼通電刺激が腱修復過程の何れの時期に如何なる影響を与えるかという点について検討することを目的に、腱断裂後早期(炎症期)と腱断裂長期経過後(修復が完了した時期)を評価の対象として、2年間の研究計画を立てた。平成29年度の前半は、先行研究において既に確立されたアキレス腱断裂処置後モデルを用いて、腱修復過程の早い段階、つまり、炎症期における組織学的な影響について検討することを目的に、組織の形態や細胞の局在、成長因子の発現についての観察を予定した。そして、平成29年度後半から平成30年度にかけて、腱修復が完了した時期の修復腱の力学的強度について検討するため、腱断裂長期経過後の修復腱の破断強度を測定する予定を立てた。計画を前後し、平成29年度は、腱断裂長期経過後における力学的検討を先行したが、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、鍼通電刺激が腱修復過程の何れの時期に如何なる影響を与えるかという点について検討することを目的に、腱断裂後早期(炎症期)と腱断裂長期経過後(修復が完了した時期)を評価の対象として、2年間の研究計画を立てた。腱修復に与える鍼通電刺激の影響について明らかにし、臨床応用を目指すためには、刺激部位や時期などを含めた至適条件に関する詳細な検討、あるいは有害事象についても検証する必要があり、2年に止まらず、継続的な研究が必須である。このことから、本研究はあくまでもその一部と考えている。申請した研究課題としては、2年目となる平成30年度に関しては、炎症期における組織の形態や細胞の局在、成長因子の発現について観察し、着実な一歩としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は動物を対象とした基礎研究であり、施設内の飼育環境により当初の計画と多少の差額が発生した。この差額に関しては、次年度に必要経費となる見込みである。
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