研究課題
本研究は,歯科用セメントであるグラスアイオノマーセメント(GIC)にハイドロキシアパタイト(HAp)粉末を添加したアパタイトアイオノマーセメント(AIC)を試作し,その反応メカニズムを解明することを目的として行っている。材料として,多孔質で平均粒径約20umのHApを使用し,基材となるGICとして小窩裂溝填塞用従来型GICであるFuji IIIを用いた。AIC中のHApの役割を解明するため,基材GICの粉液比およびHAp添加量を調整した試料群を作製し,機械的強度(3点曲げ試験および圧縮試験)およびフッ化物イオン溶出量を測定した結果,HAp添加はGICの強度の向上に直接的に関与しているが,フッ化物イオン溶出の向上は,HApの作用ではなく,HAp添加量分だけGIC粉末量が減少しGICの粉液比が低下することが原因であることが示唆された。本研究結果については,国際学会および国内学会において発表を行い,国内外の研究者らと議論することができた。また,当該年度は,前年度より予備実験を行っていた牛歯エナメル質および象牙質へのAICの接着試験および再石灰化試験を遂行した。この研究結果については,現在分析を進めている。さらに,当該年度はGICと化学的な反応を示さないセルロースをGICに添加し,AICとともにその特性を比較し評価する計画であり,食品添加用セルロースの他にセルロースナノファイバーを数社から取り寄せ,それらをGICに添加することによる特性の変化について評価するための予備実験を行った。次年度に本実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は研究計画に沿って実験を進めた。その結果の分析や成果の発表については次年度も引き続き行う予定であるが,概ね順調に進展していると考えている。
本研究課題を遂行するにあたり,大学院生2名の協力を得ている。2年間に2名とも本研究課題に必要な実験の手技は概ね習得したため,次年度はさらに検証実験を行うこととしている。
次年度使用額が生じたが少額であり,概ね使用計画に沿って使用できたと考えている。次年度使用額については,消耗品の購入に充てる計画である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Oral and Dental Health
巻: 4 ページ: -
10.23937/2469-5734/1510065