研究課題/領域番号 |
17K18249
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 准教授 (40709135)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 刹那滅 / 現代形而上学 / 時間 / 同一性 / 変化 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、平成29年度は、「時間」をテーマとする、現代形而上学の基本文献の内容理解に取り組むとともに、仏教の刹那滅論おける、知覚対象となる事物と行為対象となる事物との間の同一性の問題、すなわち時間的ギャップの問題に取り組んだ。 同一性の問題に関する研究成果を、8月20日-25日にカナダ・トロント大学で開催された、International Association of Buddhist Studies(IABS)の学術会議にて発表した。刹那滅論の立場に立つ以上、知覚対象と行為対象との間の同一性は成り立たず、それゆえ、知覚が与える情報を契機として起こる、我々の日常的な行為もまた知覚対象から逸脱するということになってしまう。この問題を仏教徒は、知覚に後続して生じる概念知あるいは推理知が知覚対象を時間的な幅をもつものとして捉えるが故に知覚対象への行為が正当化される、という説明をすることによって回避している。IABSの学術会議では以上を論じた。 また、更に遡る5月には、米国・イェール大学で行われた、仏教哲学に関するワークショップに参加し、仏教哲学、とくにダルマキールティにおける偶然性(contingency)の概念について研究発表を行った。ダルマキールティにとって、偶然性は必然性(necessity)の反対概念であり、さらに彼は、必然性を「直ちにそうなること」と解し、時間的視点を必然性の概念に読み込んでいる。ワークショップでは以上を論じた。 このワークショップでは、本研究課題を遂行する上での、研究の方法論についても多くの有益な知見を得ることができた。次年度以降、現代形而上学の時間論との対照において仏教の刹那滅論を考察する際、本ワークショップで得られた方法論に関する知見は必要不可欠であり、その意味でも非常に有益なワークショップとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画での目標をほぼ達成することができた。よって、現在までの研究は概ね順調に進んでいると言える。 研究成果のアウトプットの面では、年度中に2本の学術論文を公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、現代形而上学が提供する議論のフレームワークの中で仏教の刹那滅論を論じることに取り組むことになる。そして、その際には、現代形而上学において用いられる学術用語を積極的に用いて、インド仏教哲学のサンスクリット語原典を翻訳する必要がある。平成30年度以降の研究では、現代の形而上学を専門とする研究者の協力を仰ぎつつ、研究を進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金の執行額が年度計画予算額を上回った為、年度内の物品購入(ノート型PCの購入)を差し当たりは見送った。しかし、最終的には次年度使用額が生じることとなった。30年度では見送った物品の購入を予定している。 また、今年度は、夏季に欧州での国際ワークショップ1件への参加とそこでの研究発表を予定している。また同じく夏季に、国内学会1件においても研究発表を予定している。その双方に参加する為の旅費の執行を予定している。 上記の国際ワークショップでの研究成果を英文論文として公刊することを予定しており、その論文の英語校閲費として、人件費・謝金の執行を予定している。
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