研究実績の概要 |
免疫細胞は液性因子や細胞間接着を介した巧妙なシグナル伝達制御により, 複雑な免疫応答を効率よく進行させるが,近年この過程における細胞外小胞 (EVs)の寄与に注目が集りつつある.申請者は,T細胞と抗原提示細胞間で形成される免疫シナプス(IS)において, 接着分子インテグリンの活性化を担うRap1がインテグリンLFA-1の活性化・接着性の亢進のみならず細胞接着面でのEVsの放出を誘導する現象を最近発見した. 本研究では, この現象の詳細解明を目的とし,LFA-1関連因子ノックダウン/欠損細胞を用いてEVs排出過程を精査する.前年度までに作製・評価したRap1下流分子Kindlin-3のノックアウトマウスやLFA-1の活性型構造を安定化させるTalin-1との結合部位を変異させたLFA-1ノックインマウス等から単離したT細胞と, EVsに局在する代表的なタンパク質の一つであるCD63を分子マーカーとして利用した解析を進めた.申請者はまずCD63遺伝子をマウスからクローニングし, GFPと融合させてCD63可視化用ウイルスベクターを構築した. マウスから単離したT細胞にGFP-CD63を発現させIS解析を行ったところ, CD63は細胞接着面のcSMAC領域に主に局在したが, 興味深いことにcSMACとその周りのLFA-1が局在するドーナツ型の領域であるpSMACとの境界領域で強く局在することが明らかになった.また上述のマウスから単離したLFA-1活性の低いT細胞内ではCD63の接着面への集積が弱まったことから, cSMAC-pSMAC間でのEVs排出用の特徴的な超分子コンパートメントが存在し, それはインテグリン依存的に形成される可能性が示唆された.今後, シグナル伝達分子群のクロストークに関する詳細機構の解明を目指し解析を進める予定である.
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