研究成果の概要 |
免疫応答の初期過程では免疫細胞間相互作用に伴って免疫シナプス(IS)と呼ばれる細胞間超分子構造が効率の良いシグナル伝達のために形成される.この過程において,遺伝情報を含有する細胞外小胞(EVs)が接着面に集積することが現在までに報告されていたが, その制御メカニズムの詳細は不明であった.本研究ではリンパ球インテグリンLFA-1活性化因子欠損マウスを作製しそこから単離したT細胞を用いて, ISにおけるEVsの排出が接着面において部位特異的に起こり, それがRap1/RAPL/Mst1/NDR1/Kindlin-3を介したLFA-1活性化シグナル経路に依存していることを明らかにした.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は,現在まで不明な点の多かったT細胞-抗原提示細胞間ISの細胞間情報伝達過程において, EVsが接着依存的に集積することで情報伝達に関与する可能性を示唆し, またその引き金の一つとしてインテグリンLFA-1の活性化シグナルが重要な働きを担うことを初めて解明した.この結果は,ISの破綻や過剰な活性化を伴う免疫不全やアレルギー疾患の新規標的として, LFA-1活性化シグナル経路が一つの有用な候補である可能性を示唆する.また本研究で確立した実験手法は, 細胞内でのLFA-1活性やシグナル強度の分子レベルでの評価にも用いることが可能であり,新規薬剤の評価系としても応用されることが期待される.
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