研究課題/領域番号 |
17K18254
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
厚海 奈穂 関西医科大学, 医学部, 助教 (90612151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞系譜追跡 / 膵臓がん / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
膵臓の腺房細胞は、膵管細胞や膵島細胞とともに膵臓を構成し、その大多数を占める。定常状態においては消化液を産生する役割を担っているが、膵臓内で唯一、がんの起源となることが示されている細胞でもある。本研究は、膵障害後の腺房細胞の挙動を調べることで膵臓がんの発症のメカニズムを解明することを目的としている。これまでに、膵障害後に腺房細胞が脱分化することを示唆する知見が得られている。この現象を可視化し、その後の細胞系譜追跡を行うための2段階細胞系譜追跡マウスの作出を目指している。 H29年度は、2段階細胞系譜追跡マウス作出用のコンストラクトを in vitro において培養細胞を用いて検証し、改良を行った。定法に従ってターゲティングベクターの ES 細胞へのエレクトロポレーションと組換え体の取得、胚盤胞へのインジェクション及び偽妊娠マウスへの移植へと進む予定である。 2段階細胞系譜追跡法は、以下の3つの遺伝子改変マウスを組み合わせるシステムとして設計した。1段階目の標識を誘導するための、一般的な、組織特異的プロモーター下 Cre (ないしCreERT2) 発現マウス、新たに作出する2段階細胞系譜追跡マウス(=レポーターマウス)のほかに、2段階目の標識を試みる細胞特異的に 2nd ドライバー遺伝子を発現させるような BAC Tg マウスである。2段階細胞系譜追跡マウス(=レポーターマウス)の作出に成功すれば、任意の Cre (CreERT2) マウスを選び、BAC Tg マウス (=2nd ドライバーマウス) を作出することで、様々な組織での2段階細胞系譜追跡法に応用できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2段階細胞系譜追跡法は、以下の3つの遺伝子改変マウスを組み合わせるシステムとして設計した。1段階目の標識を誘導するための、一般的な、組織特異的プロモーター下 Cre (ないしCreERT2) 発現マウス、新たに作出する2段階細胞系譜追跡マウス(=レポーターマウス)のほかに、2段階目の標識を試みる細胞特異的に 2nd ドライバー遺伝子を発現させるような BAC Tg マウスである。この3系統を交配させて初めてはたらくシステムのため、実効性を確認するための陽性コントロールを置く必要がある。陽性コントロールとして、分化方向が明確で観察しやすい表皮を想定している。実際の研究に使用する、膵臓の腺房細胞由来細胞の2段階目標識用 BAC Tg マウスと陽性コントロールにおける2段階目標識用 BAC Tg マウスのターゲティングベクター作出に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2段階細胞系譜追跡マウスの作出と並行して、このシステムに必要なもう一つの系統の遺伝子改変マウス (BAC Tg) の作出を進める。作出次第、必要な3系統のマウスを交配してシステムの実効性を確かめると同時に、障害後腺房細胞の挙動解析を進める。 これまでは、通常の細胞系譜追跡法を用いて、腺房細胞特異的な標識と障害ののち、経時的に、その子孫細胞の組織化学的解析およびセルソーターによる分取と遺伝子発現解析を行ってきた。限られた数の遺伝子しか検討していないため、マルチプレックス定量RT-PCRを行い、より多数の遺伝子について情報を得る。これにより、障害後に2段階目標識を行うのに最適なタイミングも決定できると見込まれる。
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