研究課題
MATE(Multidrug And Toxic Compound Extrusion)型輸送体は原核生物から高等真核生物に至るまで広く保存されている多剤排出輸送体ファミリーの一つである。哺乳類においてもホモログが同定されており(SLC47)、腎臓、肝臓における有機カチオン排泄輸送体としての重要性が広く認められている。しかし、本研究では、有機カチオン排泄以外の機能、すなわち MATE 型輸送体がテストステロン輸送体として機能している可能性に注目している。これまでにマウスのMATEホモログであるmMATE2が精巣Leydig細胞特異的に発現 していることが報告されており、MATE 型輸送体のテストステロンの輸送への関与が示唆されている。また、MATE 型輸送体の基質であるシメチジンやベラパミルについては、これらをヒトに投与した際の副作用として血中テストステロンの減少を起こす可能性があることが従来から添付文書にも記載されており、ヒトにおいても、MATE 型輸送体とテストステロン分泌との関連が強く示唆される。本研究の目的は、MATE 型輸送体のテストステロン輸送体としての機能を明らかにすること、さらに、テストステロン分泌を効率よく抑制できる MATE 型輸送体阻害剤を探索することである。平成29年度は当初計画に基づき、ブタ腎近位尿細管由来LLC-PK1細胞を用いて,経細胞輸送測定系を確立し、MATE 型輸送体のテストステロン輸送活性の評価を行った結果、hMATE1を介してテストステロンが輸送されること、またその輸送の駆動力はプロトンである可能性を示唆する結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に基づき、in vitro評価系として、MATE型輸送体を介した脂溶性基質の輸送活性測定系を確立した。hMATE1安定発現させたLLC-PK1細胞をメンブレンインサート上で培養し、単層膜を形成させることで経細胞輸送活性測定系を確立した。その測定系を用いて[3H]-testosteroneを用いたトレーサー実験を行い、MATE型輸送体を介したテストステロン輸送量の評価を行った結果、hMATE1を介してテストステロンが輸送される可能性が示唆された。また、テストステロン輸送量に影響を与える因子を検討した結果、hMATE1を介したテストステロン輸送の駆動力はプロトンである可能性を示唆する結果が得られたため。
初年度に得た結果から、hMATE1を介してテストステロンが輸送されることが示唆され、シメチジン、ピリメサミンなどのMATE阻害剤がテストステロンの分泌を阻害する可能性が考えられる。当初計画に基づき、ラットもしくはマウスを用いて、シメチジン、ピリメサミンの投与が血清中テストステロン量に影響を与えるかどうかについて検討する。また、Human chorionic gonadotropin ( hCG )(50 IU/mL)刺激による初代培養pig Leydig細胞からのテストステロン分泌がシメチジン、ピリメサミン共存下で変化するかどうかも検討する。さらに、ドッキングシミュレーションを用いたテストステロン分泌阻害剤の探索を行い、候補薬物をpick upし、それらについてこれまでに確立した評価系を用いて、テストステロン分泌阻害能の評価を行う。
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10.1159/000460822