研究実績の概要 |
【目的】嚥下機能評価は嚥下造影検査がゴールドスタンダードとされているが,X線被曝や造影剤誤嚥の危険性などの問題がある.一方,超音波検査(以後,US)は誤嚥の描出に不向きだが非侵襲性と簡便性に優れており,嚥下機能評価に導入されてきた. そこで,本研究ではUSを用いた嚥下運動の評価方法に検討を加え,嚥下関連筋の協調運動を評価するための指標を考案することを目的とした。 【対象と方法】対象は嚥下機能に問題のない若年者42名(男性18名,女性24名)と高齢者42名(男性18名,女性24名)とした。5 mlの水嚥下時の舌骨と喉頭の動態をUSで描出し,運動開始位置から最大移動位置までの2次元移動距離を変位量として測定した。さらに,舌骨変位量を喉頭変位量で除した値を舌骨喉頭運動比と定義して算出した。各パラメータについて,若年者男性群と同女性群,高齢者男性群と同女性群の4群間比較を行った。 【結果およびまとめ】舌骨変位量は若年群と高齢群で有意差を認め、喉頭変位量では年齢間および男女間において有意差が認められた。舌骨喉頭運動比は年齢、身長、体重などの身体的特徴とは有意な相関を認めず、若年男性群、若年女性群、高齢男性群と高齢女性群の4群間において有意差は認められなかった。舌骨喉頭運動比は身長による体格差や加齢による生理的変化の影響を受けずに、正常嚥下において一定の値を示した。今後、本研究で得られた指標である舌骨喉頭運動比は、嚥下障害者を対象に検討し、嚥下運動の質的評価に応用したいと考えている。
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