私の主な研究対象はパルサーと呼ばれる天体で、高速で回転している強磁場中性子星と考えられている。現在我々の銀河系内に2700以上観測されるパルサーは、その回転に起因して正確なパルスを発する天体として観測される。中性子星は1934年、わずか中性子発見の2年後に理論的には予言された。当初中性子星は、可視光で輝く恒星に比べて高温高密度でコンパクトな天体であるため、X線星として見つかるとされていた。しかし1967年、パルサーの発見は電波天文学によってなされた。パルサーからの電波放射の機構は不明で、それは発見以来の最初にして最大の謎である。中性子星のようなコンパクトな天体から電波を放射するには、非常にコヒーレンスの高い放射機構を考える必要があり、パルサーは天然のレーザー発振器と言える。地上の高強度レーザー実験でパルサー周辺で起こる極限物理現象を検証することが本研究の目的である。 本年度は実験室レーザーを用いた誘導コンプトン散乱に関する実験提案の論文をもとにした。国立研究開発法人量子科学技術研究機構 関西光科学研究所の施設共用利用課題が採択され、当該機関のJ-KAREN-Pレーザーと呼ばれるレーザーを用いた誘導コンプトン散乱実験を行った。COVID-19の影響で実験は2020年度の12月まで延期されたが無事に実験は行われた。共同研究者らと実験データの解析を現在行っている。また、パルサーの研究に関連して昨年度執筆した相対論的磁気流体の加速に関する論文をを元に新たに相対論的磁気流体シミュレーションも行っており、こちらも現在進行中である。 最終年度にあたって、日本最高強度を誇るレーザーを用いた実験を遂行することができた。また、数年後に稼働予定のルーマニアにある世界最高強度のレーザーExtreme Light Infrastractureでの実験についても議論を進めている。
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