超音波画像診断装置は安価・簡便で侵襲を伴わずに筋評価を行うことができ、筋量指標である筋厚に加え、画像上の筋の白黒の度合い(エコー輝度)をもとに筋内脂肪量の評価も可能である。本研究は、要介護者の原因疾患として最も多い脳卒中片麻痺者を対象に、超音波画像診断装置を用いて筋量と筋内脂肪量を評価し、2年間の生活機能低下や要介護度進行を予測する縦断研究である。 2019年度ですでに全対象者の2年後フォローアップ測定まで終了しており、2020年度はデータ解析と学会集会での発表および論文の投稿を行った。2年間の体幹・大腿・下腿筋の縦断変化を解析した結果、麻痺側外側広筋において筋厚の減少と筋エコー輝度の上昇、非麻痺側大腿直筋において筋エコー輝度の低下が認められた。このことから筋量・筋内脂肪量の縦断変化には筋による違いがあり、特に麻痺側外側広筋において筋量減少と筋内脂肪量増加が生じやすいこと、非麻痺側大腿直筋においては筋内脂肪量が減少することが示唆された。一方、筋厚や筋エコー輝度(ベースラインの値および2年間の変化量)は、2年間の要介護度進行や生活機能低下には関連していなかった。このことから超音波を用いた筋量や筋内脂肪量では、将来の要介護度進行や生活機能低下の予測には限界があることが示唆された。これらの解析内容の一部については学術集会で発表し、また英語論文にまとめて国際学術雑誌に投稿し現在は査読中である。 また2020年度は、2019年度にまとめていた脳卒中片麻痺者と健常高齢者との比較データに関する論文を、国際学術雑誌にて発表した。
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