非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)は、強力な血管内皮由来血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)の合成を阻害する内因性NO合成酵素阻害物質である。ADMAは体内においてタンパク質のターンオーバーで恒常的に産生されているが、ADMAの過剰蓄積はNO産生量低下を介して血管内皮障害を生じさせ、高血圧や心血管疾患の発症リスクを高める。したがって、体内ADMAを減少させることはこれら疾患の発症を予防し、健康寿命の延伸に寄与するものと考えられる。本研究は、細胞内ADMA濃度を低下させる効果を有する可能性のある機能性食品成分の探索に向けて、細胞内ADMA分解活性を指標とする簡便なスクリーニング系を確立することを目的とした。 ADMA分解活性のスクリーニング系確立に向けて、まずADMA分解酵素であるdimetylarginine dimethylamino hydrase-1(DDAH-1)活性を測定するバイオセンサーの作成を試みた。方法は、ADMA存在下でDDAH-1に結合するタンパク質及びペプチドを探索し、そのタンパク質を用いてFRETセンサーを作成することを計画した。しかしながら、本研究期間内に目的とするADMA存在下でDDAH-1に結合するタンパク質を見つけることはできなかった。 次に、別のアプローチとして我々が独自に樹立したADMAに対するELISA系を応用してスクリーニング系を構築を試みた。結果、当初のELISA系よりも操作の簡便化、測定時間の短縮を行い、スクリーニング系として実用性を高めることができた。本ELISA系を利用し、培養細胞を用いたダイゼイン添加によるADMA低減効果の測定を行った。本研究によって、ADMA低減効果を有する機能性食品成分探索を進めていくうえで有用な成果を得ることができたと考える。
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