研究課題/領域番号 |
17K18276
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
天畠 秀秋 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (20441222)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 終末期古墳 / 3次元GIS / 景観シミュレーション / UAV写真測量 / 景観 / 立地 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、3次元GISを用いて河内・大和における終末期古墳の立地に関わる景観を可視化して各古墳の景観の特徴を明らかにした上で、それらを類型化することにより、終末期古墳の立地原則を、古代の思想(死生観)と自然景観との関係から解明することを目的としている。 当年度は、河内・大和における終末期古墳の基礎情報および古代の思想(死生観)の把握のための文献調査(2-1)、終末期古墳の現況把握と分類および微地形の測量のための現地調査(2-2)、3次元GISによる終末期古墳の立地に関わる景観の可視化(2-3)を行った。 2-1.文献調査:86基の基礎情報(地形図、推定築造年代、古墳の形態、石室・石槨の開口方向等)の文献調査が完了。 2-2.現地調査:①27基(再調査含む)について現況把握と分類のための現地調査実施。a)見晴らしが良いもの26基、b)見晴らしの一部が遮られているもの20基、c)見晴らしが悪いもの25基(移設・破壊されたものも含む)の3つに現況を分類。②大和の19基についてUAVを用いたSfM多視点ステレオ写真測量による古墳周辺の微地形の測量実施。 2-3.3次元GISによる景観の可視化:①当年度UAV写真測量を実施した19基の微地形の3次元モデル作成が完了。②前年度UAV写真測量を実施した4基を対象に、3次元GISを用いて、微地形の3次元モデルと、国土地理院配布の5m・10mメッシュ等により作成した広域の3次元地形モデルを統合する方法を検討した。微地形の3次元地形モデルから作成した高精細なDSMとオルソ画像を広域の3次元地形モデルに重ねることにより、古墳の石室・石槨や墳丘の形態、開口方向と古墳から見た自然景観の関係を示すシミュレーション画像の作成が可能になった。③今後、上記19基についても自然景観のシミュレーション画像の作成を行い、各古墳の立地の特徴を分析する予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2-1.文献調査:概ね予定通りに進行しており、86基の古墳について完了。 2-2.現地調査:古墳の現況把握と分類のための現地調査は、やや遅れており71基について完了。UAVを用いた微地形の測量のための現地調査は、前年度は河内の4基、当年度は大和の19基について完了。下記の理由によりUAVを用いた微地形の測量は、詳細な地形図が手に入らない全ての古墳を対象に行うことが困難であるため、今後は調査済みの古墳に対象を限定して研究を進める予定である。 ①UAV飛行のため古墳の土地所有者または管理者の了解を得るための調整に想定以上に時間と手間を要する。②特に民有地にある古墳は土地所有者または管理者の特定が困難である場合が多い。③特定できてもUAV飛行の了解を得られなかった場合もある。 2-3. 3次元GISによる景観の可視化: ①UAV写真測量によって、計23基の古墳とその周辺の微地形の3次元モデルの作成が完了。得られたオルソ画像をGNSS測量による高精細な位置情報によってジオリファレンスすることにより、横口式石槨・石室の正確な開口方向等の測定が可能になった。②前年度に調査した4基を対象に、古墳から見た景観の可視化方法を検討した。3次元GISを用いて、UAV写真測量による3次元モデルから作成した高精細なDSMとオルソ画像を広域の3次元地形モデルに重ねて表示することにより、古墳の石室・石槨や墳丘の形態、開口方向と自然景観の関係を示すシミュレーション画像の作成が可能になった。研究成果は、論文で社会に公開した。③UAV飛行の了解が得られなかった陵墓については、陵墓地形図集成の等高線から3次元地形モデルを作成した。GISでの統合方法は検討中である。④今後、当年度に調査済みの19基の古墳から見た自然景観のシミュレーション画像を作成し、各古墳の立地の特徴を分析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の前半は、河内・大和における終末期古墳を対象に3次元GISによる終末期古墳の立地の可視化(2-3)を行い、各古墳の立地に関わる景観の特徴を明らかにする。最新の研究動向を把握・反映するため河内・大和における終末期古墳の基礎情報および古代の思想(死生観)の把握のための文献調査(2-1)、終末期古墳の現況把握と分類および微地形の測量のための現地調査(2-2)を補足的に行う。当年度の研究成果である、古墳の石室・石槨や墳丘の形態や開口方向と古墳から見た自然景観の関係を示すシミュレーション画像の作成方法について、iaSU(国際シルクロード大学連合)国際会議、学会大会(日本建築学会)で口頭発表し社会に公開する予定である。 UAVを用いた微地形の測量のための現地調査は、詳細な地形図がない全ての古墳を対象に行うことは、上記の理由により困難なため、調査済みの古墳に対象を限定して研究を進める予定である。UAV飛行の了解が得られなかった陵墓については、地形図から作成した3次元地形モデルをGIS上で統合する方法についての検討を経て、景観の特徴を分析する予定である。景観の可視化のうち、古墳を見た自然景観のシミュレーション画像の作成は、視点の選定方法等の検討を経て行う予定である。 令和元年度の後半は河内・大和における終末期古墳の立地に関わる景観の類型化(2-4)を行い、過年度の研究成果とあわせて分析・考察することで、河内・大和における終末期古墳の立地原則を解明する。研究成果は、学会大会(日本建築学会)や学術論文(日本建築学会)等で社会に公開する。
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