本研究課題では、3次元GISを用いて河内・大和における終末期古墳の立地に関わる景観を可視化して各古墳の景観の特徴を明らかにした上で、それらを類型化することにより、終末期古墳の立地原則を、古代の思想(死生観)と自然景観との関係から解明することを目的とする。 最終年度は、3次元GISによる終末期古墳の立地に関わる景観の可視化(2-3)、各古墳の景観の類型化(2-4)を行った。 2-3.3次元GISによる景観の可視化:大和の19基を対象に、3次元GIS を用いて、UAV写真測量による微地形の3次元モデルと広域の3次元地形モデルを統合することにより、古墳から見た景観シミュレーション画像を作成し各古墳の景観の特徴を明らかにした。 2-4.各古墳の景観の類型化:①河内・大和の計23基の終末期古墳から見た景観を以下3つに類型化した。類型1: 見晴らしの良い丘陵上に立地しパノラマで遠景の山並みが見えるもの12基、類型2: 山麓付近にある小規模な谷や盆地内の丘陵上に立地し中景の丘陵の間から遠景の山並みが見えるもの9基、類型3: 付近の丘陵が景観の中心であり遠景の山並みがほとんど見えないもの2基。②古墳の軸線の方位が、遠景の山並みが見える方向と一致するものが13基あった。以上より、終末期古墳の立地原則として、遠景の山並みの眺望景観が重視され、古墳の軸線の方位が眺望景観との関係で決定された可能性が高いことが明らかになった。 研究期間全体を通じた研究成果として、①UAV写真測量と3次元GISによる終末期古墳の景観の可視化方法を提案したこと、②河内・大和の計23基の終末期古墳から見た景観を可視化したこと、③景観の類型化を通して、終末期古墳の立地原則として、古代の死生観と深く関係すると考えられる遠景の山並みの眺望景観が重視された可能性が高いことを景観的な観点から明らかにしたこと、が挙げられる。
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