研究課題/領域番号 |
17K18279
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
寺地 祐介 帝塚山大学, 経済経営学部, 准教授 (30610092)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 航空ネットワーク / ハブスポーク / 空港政策 / ネットワーク選択 / 空港間競争 |
研究実績の概要 |
本年度は,これまでの研究成果のうち,特に「効率的なネットワーク形成に向けた政策手段」と「空港間価格競争のネットワークへの影響」について論点の整理を行った.「効率的なネットワーク形成に向けた政策手段」については,特に日本における離島路線の支援制度についての調査を行い,その支援策と整合性が取れる形で論文の論点整理を行った.「空港間価格競争のネットワークへの影響」については,これまでの「競争関係にある空港間のトリップ需要が存在する状況での空港間価格競争」に関する研究において着目していたハブ形成における規模の経済の一つである密度の経済の影響を抽出するため,空港間のトリップ需要がない状況に着目して,分析を再検討した.その結果,これまでの研究では,最適解とはならなかった相対的に小さい空港にハブが立地することが最適解となることが判明した.また,競争そのものの非効率性よりも,民営化に伴う空港の市場支配力が効率的なネットワーク形成の阻害要因となることが判明した.これらの研究について一定の成果は得たものの,新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け,予定していた国際学会での報告ができなかった.2021年度は,これらの成果について,学術誌への掲載に向けた準備を行う予定である. また,これまでの研究における成果である①乗継旅客市場における空港間価格競争や②ハブ空港における航空会社間競争と小需要路線への支援制度の関係,③競争関係にある空港間のトリップ需要が存在する状況での空港間価格競争についても,本年度同様に,現実の問題との対応関係を明確にするための論点整理を行い,論文の改訂作業に取り組む予定である.加えて,昨今の新型コロナウィルスの感染拡大に伴う移動需要の喪失に伴い,特に,上記②の研究について,現在の問題との整合性を保つ形で論文の改訂を行うこととしたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の主たる成果は,「効率的なネットワーク形成に向けた政策手段」ならびに「空港間価格競争のネットワークへの影響」について,論点整理を行い,新たな知見が得られたことである.しかし,新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,国際学会での報告ができなかったことが反省材料の一つである.また,これまでに得られている成果についても,学術誌での掲載が達成できなかったことも反省すべきである.この遅れは,特に,2020年度前期を中心に遠隔授業への対応業務が発生し,研究に対するエフォート率の大幅な低下が生じたためである.本来は,2020年度に研究機関の1年間の延長を受け,これまでの成果を取りまとめて,学術誌での掲載に向けた準備作業に充てる予定であった.しかし,このような状況を受け,再度,延長を行うこととし,2021年度はこれまでの研究成果を取りまとめる期間に充当したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,基本的にこれまでの研究成果である①乗継旅客市場における空港間価格競争や②ハブ空港における航空会社間競争と小需要路線への支援制度の関係,③競争関係にある空港間のトリップ需要が存在する状況での空港間価格競争,④効率的なネットワーク形成に向けた政策手段,⑤空港間価格競争のネットワークへの影響について,学術誌掲載に向けた分析の精緻化や論点の再整理,論文校正に取り組む予定である. これらに加えて,昨今の新型コロナウィルスの感染拡大に伴う移動需要の喪失が航空ネットワークに与える影響を検証することを目的として,「航空会社間競争と均衡ネットワークの歪み」についても検討したいと考えている.具体的には,これまでの①~⑤の研究では,論点の明確化を目的として,単一の航空会社のネットワーク選択に空港政策や空港間競争が与える影響を検証していた.この研究課題では,複数の航空会社がネットワーク選択を行えるという形でこれまでの研究課題を拡張する.この拡張によって,個々の航空会社はネットワーク外部性を内部化することができず,ネットワーク選択において非効率が生じると考えている.加えて,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う移動需要の喪失を明示的に考慮するため,需要に不確実性を導入することで,ネットワーク形成における政策の役割を明らかにしたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,新型コロナウィルスの感染拡大の影響が挙げられる.具体的には,国際学会が中止やWeb Conferenceとしての実施に変更となったため,予定していた旅費の支出が行われなかったことである.また,同時に,2020年度前期を中心に,遠隔授業への移行に伴う準備作業に追われたため,予定していた論文の改訂作業が遅れた結果,英文校正用の経費支出が予定よりも少なかったことも次年度使用額が生じた要因である. これらを踏まえ,次年度は,次のような形で,研究費の執行を行う.まず,英文校正については,現在複数の論文について,英文校正サービスへの委託準備を始めている状況にある.一方で,旅費については,新型コロナウィルスの世界的流行により,参加予定であった国際学会がWeb開催に変更となったため,日本国内を中心とした航空政策や空港政策に関するデータの収集やヒアリング調査等に充当したいと考えている.
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