相続税や控除制度にみられるように、租税法はその国の家族制度に密接にかかわっている。近年は、異性間の婚姻以外の家族制度の法整備が各国で進められており、これに関連する所得税や相続税の軽減措置の適用をめぐり、納税者が訴訟をおこすケースも多い。その一方、日本では新しい家族制度に対応するための租税法上の仕組みに関する研究があまり行われていなかったため、本研究では諸外国において法整備が進められている新しい家族の形に対応するための租税法上の仕組みに着目し、日本の租税制度が家族の形の選択に対する国家の中立性を確保しているのか、多様化する家族の形にどのように対応するべきかという問題意識のもと、日本の家族法や国際私法との関係にも配慮しつつ、多様化する家族制度とそれに対応する租税法について、経済的アプローチの観点を含め多角的に分析することを目的とした。 本年度は、これまで研究してきた婚姻制度と公平性の内容を初学者向けの書籍に反映させた。また、税制とジェンダーバイアスについても論文を公表し、さらに昨年度に国際取引法学会で報告した内容を論文にまとめ発表した。議論の場としては、法政策研究会を開催し、法政策と比較法的観点から意見交換を行った。研究の具体的な内容としては、まず、租税法特有の複雑性と、そこから生じる問題の概要を明らかにし、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ、フランスの租税控除制度に対する平等原則違反の事案を抽出した。また、同性婚や登録パートナーシップ制度の導入にあたり、どのように税制関連条文が追加または改正されたのかを整理し、租税法上の優遇措置との関係性について情報収集を行った。 今後は、本年度の研究成果にさらに調査研究を加え、発展させた研究内容をとりまとめて公表する予定である。
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