研究課題/領域番号 |
17K18284
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大坂 昇 岡山理科大学, 理学部, 講師 (80550334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子ゲル / イオン液体 / 相分離 / 結晶化 / 多孔体 |
研究実績の概要 |
高濃度のリチウム塩存在下において結晶性フッ素樹脂(poly(vinylidene fluoride))とイオン液体(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)amide)からなる溶液が、冷却により相分離と結晶化を起こし、多孔性イオン液体ゲルを形成することを見出した。この発見を契機として、昨年度までにリチウム塩濃度に依存した相分離温度と結晶化温度の詳細な相図作成から取り組み、DSCによる熱物性(融点、結晶化度)の評価、広角・小角X線散乱測定による構造評価(poly(vinylidene fluorideの結晶相、ラメラ長周期、結晶ラメラの厚み)を行った。相分離が起きるリチウム塩濃度は20wt%以上であり、急激に相分離温度が上昇すること、相分離の発生により球晶成長速度が急激に上昇すること、球晶成長速度の上昇によりpoly(vinylidene fluoride)の結晶相がγ相からα相へ転移すること、リチウム塩によるpoly(vinylidene fluoride)の融点上昇は結晶ラメラ厚みの増加に起因しないこと、などが明らかにされた。側鎖アルキル基の長さの異なるイオン液体や、水素結合を形成し得る水素をメチル基に置換したイオン液体を用いて結晶化速度、結晶化温度、相分離温度などの定性的な比較を行い、マクロな物性挙動を基にして溶媒和に関する考察を行った。また、顕微鏡観察を詳細に行うことで、相分離の発生が空気と接するイオン液体表面近傍から起きるなど、当初想定していなかった新規現象の発見があり、こちらの解明も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した計画に沿って研究を実施することができており、得られたデータを基に相分離を引き起こす分子論的機構の考察が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を論文にまとめる作業をすすめながら、イオン液体の表面近傍から相分離が進展する新規現象の解明などを進めていく。また、得られた多孔性イオン液体ゲルの電気物性を評価するために装置の購入、実験環境の構築を行っていく。
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