高濃度のアルカリ金属塩の添加で高分子/イオン液体が相分離を起こす現象を解明する目的で、まずはアルカリ金属塩のカチオンを従来のLiだけでなく、Na、Kと変えて相図作成を行なった。その結果、Na、Kからなるアルカリ金属塩でも相分離が発生することを確認した。また、Li、Na、Kの順に相分離曲線がより高濃度側にシフトすることが明らかにされた。これらの現象の解明を目的に、結晶化温度よりも高温下にて、アルカリ金属塩の濃度を変えて詳細な赤外分光測定、ラマン散乱測定を行なった。赤外分光測定の結果、イオン液体はPVDFとアニオンのスルホニル基を介して相互作用していることが明らかになった。そのため、アルカリ金属塩の添加でアルカリ金属塩がイオン液体のアニオンと錯体を形成すると、PVDFへの溶媒和が減少し、PVDFがエネルギー的に不安定化することで相分離が起きたとことが示唆された。ラマン散乱測定の結果、Li、Na、Kの順でアルカリイオンと錯体を形成するアニオンの数は増加したが、アルカリイオンとの相互作用はイオン半径が大きくなるにしたがい低下した。そのため、Li、Na、Kの順に相分離曲線がより高濃度側にシフトした原因はアルカリイオンへの溶媒和数よりも相互作用の強さが支配的になっているのではないかと考えられる。
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