高齢者の筋量の減少が重篤な予後と関連することは広く知られている。一方、最近では地域在住高齢者の筋内脂肪量の増大は、筋量の減少よりも筋力、運動機能、転倒に関連することが明らかとなっている。これらを踏まえると、高齢入院患者の筋内脂肪量の特徴を把握することは極めて重要な課題となるが、それらは殆ど明らかとされていない。本研究課題は、高齢入院患者の筋内脂肪量の量的特徴やそれらと歩行自立度、嚥下機能および栄養状態との関連を調査することを目的とした。結果、高齢入院患者の大腿四頭筋の筋内脂肪量は性別、年齢、体格がマッチングした地域在住高齢者の1.7倍にまで増大し、歩行が自立していない高齢入院患者の筋内脂肪量は、歩行が自立した高齢入院患者のそれらよりも増大していることが明らかとなった。一方、歩行が自立していない高齢入院患者と歩行が自立した高齢入院患者との間の筋量には差が認められなかった。そして、高齢入院患者の筋内脂肪量の増大は、嚥下機能の低下および低栄養状態と関連することが確認された。またこれら関連性は年齢、性別、body mass index、投薬数、炎症状態、合併症、入院日数などの他の交絡要因で多変量補正した後も確認された。さらに、その多変量解析の結果から、筋内脂肪量の増大は、筋量の減少よりも嚥下機能の低下に関連することが明らかとなった。本結果は、高齢入院患者の筋内脂肪量の増大は著しく、筋内脂肪量の増大は歩行自立度の低下、嚥下機能の低下および低栄養状態に関連すること、さらに筋内脂肪量の増大は、筋量の減少よりも歩行自立度と嚥下機能の低下に関連することを示した。
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