研究課題/領域番号 |
17K18295
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
大澤 昂志 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (00783226)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核酸化学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オリゴ核酸創薬等に利用可能な理想の人工核酸材料を開発することである。本研究では、糖部とリン酸部の配座を厳密に固定でき、かつ短工程で簡便に合成可能な人工核酸を創製を目指して、スピロケタール型人工核酸を合成し、本人工核酸を導入したオリゴ核酸の機能評価を行う。平成29年度は研究計画に従って、チミン塩基を持つスピロケタール型人工核酸の合成に着手した。その結果、以下の研究成果を得ることができた。 [1] 設計したスピロケタール型人工核酸のモノマー (5'S体)、並びにそのジアステレオマー (5'R体) を出発物質のチミジンから合成できた。 [2] 合成した人工核酸モノマーの1H NMR測定によって、スピロケタール型人工核酸 (5'S体) の糖部立体配座が望みのN型配座を優先的にとることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では、スピロケタール型人工核酸の合成と構造解析、さらに、スピロケタール型人工核酸で修飾したオリゴ核酸の二重鎖核酸形成能の評価を行うことを目標にしていた。そして、望みのスピロケタール型人工核酸モノマーを合成し、さらに1H NMR測定による構造解析を行い、その糖部立体配座が望みのN型配座を優先的にとることを明らかにできた。しかし、スピロケタール型人工核酸5'位の2級水酸基の反応性が想定以上に悪く、オリゴ核酸合成に適用可能なホスホロアミダイト体を得ることができなかった。そのため、当初の計画で予定していたオリゴ核酸合成までには至らなかった。このように、本研究課題の進捗はやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に合成できた人工核酸をオリゴ核酸に導入し、その相補鎖RNAに対する結合親和性を物理化学的手法により評価する。さらに、核酸分解酵素や血清に対する分解耐性能も合わせて評価する。また、本年度で合成できなかったスピロケタール型人工核酸の誘導体(2'-メトキシ体、2'-リボ体など)について、その合成と構造解析を行い、同様にオリゴ核酸の物性評価を行う。 さらに、研究を順調に進めれば、スピロケタール型人工核酸がオリゴ核酸医薬として適用可能かを調べるために、特に優れた物性を有することが明らかになった誘導体について、培養細胞系での薬効評価を行う予定である。本実験は、申請者が所属する研究室ですでに確立している手法を用い、脂質異常症の治療標的とされるアポリポタンパクの一種ApoBをコードする遺伝子を標的にするアンチセンス核酸 (配列: 5'-d(TTCAGCATTGGTATTC)-3') を合成する。続いて、得られたアンチセンス核酸をヒト肝細胞由来細胞Huh-7へ導入し、ApoB mRNAの発現量を定量することで遺伝子発現抑制効果を調べる。また、オリゴ核酸医薬の素材として現在、有望視されている2',4'-BNA/LNAをポジティブコントロールとして比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
およそ2万円ほど剰余したが、配分された予算をほぼ当初の計画通りに使用したと考えている。故に次年度の予算についても前年度と同様に、研究の遂行に必要な試薬などの消耗品(物品)費に140万円程度、本研究の成果を広めるための学会参加に関わる旅費に15万円程度、その他、学会参加費や学術誌投稿に関わる費用に5万円程度使用する計画である。
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