本研究の目的は、オリゴ核酸医薬などに利用可能な理想の人工核酸材料を開発し、アンチセンス法をはじめとした新たな核酸創薬の基盤構築を目指すことである。その実現に向けて本研究では、糖部とリン酸部の配座を厳密に固定し、かつ短工程で合成可能なスピロケタール型人工核酸を合成し、そのオリゴ核酸中での性質、機能を評価する予定であった。平成30年度は、昨年度に合成したスピロケタール型人工核酸の5'S体と5'R体のオリゴ核酸の導入を引き続き行うとともに、昨年度合成できなかった2'位をメトキシ基で修飾したスピロケタール型人工核酸の合成を行った。まず、昨年度合成したスピロケタール型人工核酸の5'S体と5'R体をオリゴ核酸へ導入するためそれぞれホスホロアミダイト体へと誘導を試みた。しかし、5'位水酸基の反応性が5'S体と5'R体ともに予想以上に悪く、5'位水酸基に保護基を導入することができず、望みのホスホロアミダイト体を得ることはできなかった。一方で、2'位をメトキシ基で修飾したスピロケタール型人工核酸については、昨年度確立した経路を利用することにより、出発原料の2'-O-メチル-5-メチルウリジンから10工程で望みのスピロケタール型人工核酸を5'S体ならびに5'R体のジアステレオ混合物として得ることができた。しかし、合成した2'-メトキシ体 (5'S体ならびに5'R体) はシリカゲルカラムでの精製が困難で、2'-メトキシ体の糖部配座の解析とオリゴ核酸への導入を試みることができなかった。
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