昨年度までの研究により、サービスデザインプロセスを活用した産学連携については、学生によって作られた資料(社外人工物)の存在が企業担当者に再度の学習を行うヒントになり、産学連携プロセスにおける企業側の学習の促進に寄与していることが明らかにされていた。オランダ、アムステルダムにて開催をされたUX STRAT2019にてユーザーエクスペリエンスおよびサービスデザインの組織的対応について実践者とのディスカッションを行い、研究成果についての実践的な示唆を得ることができた。UX STRATを通じては、企業組織におけるアジャイル文化の構築や組織内におけるセクショナリズムをいかに乗り越えるか、また新規性の高い手法や概念の学習動機の形成をどのように行うか、という話題が頻出していた。これらを踏まえた際に、サービスデザインプロセスではない商品開発プロセスを実施した際に生じていた共同体内学習と複眼的学習、共同体外学習と循環的学習の組み合わせの組織学習プロセスは有効であると考えられた。組織内へ導入される人工物やその創出が組織内成員の行為を規定するため、文化構築やセクションの越境を比較的容易にしてくれるはずである。また企業内における重要かつ緊急ではないテーマに焦点をあて、その実際を共同体内学習するることで学習動機を高めることができるのではないかと考えられた。これらをまとめた原著論文については執筆を行っており、2020年9月に刊行予定である。また、本研究を通じて得られたユーザーエクスペリエンスおよびサービスデザインの知見とその経営的対応についてゲーム業界における組織的対応についても成果をまとめた。
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