液性抗癌因子モデルの抗菌ペプチドNisinによる解析を行った。具体的には1.Nisinによるケラチン(K)5、K17のリング状の分布の乱れがどの様な現象を示しているのか、2.リング状の分布の乱れが生じない場合はnisinがケラチノサイトに作用していないのかの2点を明らかにした。 超解像顕微鏡を用いた解析により、nisinによる作用でケラチノサイトにはリング状というよりも、球状の構造が観察されることが分かった。K5、K17だけでなくアクチンもこの球状構造を構成していた。また、この球状構造は低温下などのエンドサイトーシス抑制条件下では観察されなかった。直径が1μmを越えること、Macropinocytosis阻害条件下(アクチン重合阻害剤、細胞遊走)では観察されなかったことから、Macropinocytosis様の反応が起きている可能性が示唆された。このMacropinocytosis様反応と類似したnisin作用条件下で、ケラチノサイトのLampIIの核・核周囲から細胞質への分布変化が観察され、NisinによりLysosomeなどの小胞の分布に変化が生じている可能性が考えられた。 また、Macropinocytosis様の構造が観察されない短時間のnisin作用条件でも、細胞膜のflip-flop、デスモゾーム・中間径フィラメント複合体の減少が観察され、nisinが作用していることが明らかになった。 さらにNisinにより細胞塊形成の阻害が確認されたことから、平面培養だけでなく、3次元培養でもNisinがケラチノサイトに作用することが明らかになった。 Macropinocytosisは癌細胞の代謝において重要な役割を果たすことが知られている。また、微小環境での癌細胞の生存に関係することから、癌の悪性度とも関連すると考えられており、微小環境でのMacropinocytosis様反応についてさらに解析していく必要性が示唆された。
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