研究実績の概要 |
本研究の目的は、繊維原料などに使用され、取扱い作業者が急性肝炎を発症したN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)取扱い作業者のリスク評価法の開発である。DMACは皮膚からの吸収があることが指摘されており、ばく露評価として体内取り込み量が反映される尿中代謝物濃度測定が有効である。現在、米国が勧告するガスクロトマトグラフ(GC)法による尿中N-メチルアセトアミド(NMAC)をバイオマーカーにばく露評価されている。しかしながら、GC法はGCの注入口温度によりNMACの前駆物質であるN-メチル-N-ヒドロキシメチルアセトアミド(DMAC-OH)が熱分解し、NMACとなることから、測定精度に問題があることが指摘されている。 本研究では、上記の問題点を解決するために高速液体クロマトグラフ法によりDMACとDMACの代謝物3物質(DMAC-OH、NMAC、S-アセトアミドメチルメルカプツール酸;AMMA)の4成分を同時に精度良く測定可能な測定法を開発した。また、DMAC取扱い者について、週明け、週末、作業前、作業後のタイミングで尿中代謝物濃度を測定し、作業中の個人ばく露濃度、および保護手袋を透過した皮膚吸収を確認するため保護手袋の下に捕集剤を貼り付け、通常使用している手袋と耐溶剤用の保護手袋のDMACの透過性の違いを測定した。その結果、個人ばく露濃度は0.15 ppmと基準値である10 ppmを大きく下回った.その際の尿中代謝物はDMAC-OHとAMMAのみが検出され、濃度が最大となった週末の作業終了後で1.27 mg/g creatinine、0.24 mg/g creatinineであった。DMACの保護手袋のに関しては,耐溶剤用の保護手袋を着用した場合、手袋を通過したDMACは著しく低下し、尿中代謝物濃度も低下した。
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