研究課題/領域番号 |
17K18305
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
水野 裕志 長崎総合科学大学, 工学部, 講師 (30591234)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウェアラブル / 熱中症予防 / 頸部 / 体温 / 脈波 / 環境情報 / 温度差発電 / 冷却機能 |
研究実績の概要 |
本研究では,首元で簡単に使用できる完全ウェアラブル型熱中症予防システムの開発を目的とする。環境情報並びにバイタル情報を融合させることで,暑さ指数に基づく熱中症の重症度を検出し,頸動脈の冷却を行い,医療機関から適切なアドバイスが受けられるシステムを構築する。平成29年度は,バイタル情報として体温及び脈波センサを試作し,機能評価と妥当性確認並びに実証実験から暑さ指数に基づく熱中症の重症度を検出するためのバイタル情報収集用センサの有効性を検証した。成果を以下に示す。 (1)設計した体温センサは最大許容誤差±0.05℃の高精度を実現し,標準規格として婦人体温計としても適応できることがわかった。また,室温(初期温度)±標準偏差=22.8±0.7℃の環境下において飽和温度範囲33℃から43℃の範囲では,平均応答時間±標準偏差=14.2±1.5秒であった。これは30秒以内とされている標準規格に準拠していることを確認した。 (2)設計した脈波センサは0.7Hz-3.4Hzの通過帯域を持つフィルタを有し,3V単電源動作を可能にした。熱中症診断等にも活用できる簡易的な血管機能評価法として,身体の2箇所として右頸部及び右指尖間の脈波伝搬速度の計測が有効であることが示唆された。 (3)日常生活下における頸部での体温及び脈波測定の実験的検証を行った。結果,体温測定では,深部温では外気温の変化による作業者環境の変化を検出できないため,頸部温の測定に有用性があることがわかった。脈波測定では,動脈硬化の指標の一つでもある平均血圧値を脈波センサを取付けるだけで容易に推算し,実測値との比較から20代健常成人を対象とした場合,平均血圧値を平均誤差率±標準偏差=7.26±3.35%で測定できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の一つである体温及び脈波センサの試作が完了し,日常生活下におけるバイタル情報から体温変動の追従性の確認や簡易的な血管機能評価法の提案を行った。当初予期していなかった研究成果を得ることができたため,検証に時間を割くこととなり,当初の計画である環境センサの複合化に着手できなかったのが大きな理由である。環境センサの試作については,デバイスに組み込むセンサの選定は完了しているものの,現在,小型化を図るためのモジュール設計段階である。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は,まず,モジュール設計段階の環境センサの試作を完了させ,精度確認及び校正後に試作が完了している体温及び脈波センサと複合させる。次に,複合したデバイスの機能評価と妥当性確認並びに実証実験から暑さ指数に基づく熱中症の重症度を検出するための条件を見出し,最後に体温と環境温度差を利用した温度差発電と冷却機能の検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた体温,脈波,環境センサの成型部品の製作を行わず,体温,脈波センサの筐体は3Dプリンターで試作設計し出力したため大幅なコスト削減が可能となったのが理由である。また,当初予定していた環境センサの試作について,デバイスに組み込むセンサの選定は完了しているものの,現在,小型化を図るためのモジュール設計段階であることも次年度使用額が生じた理由の一つである。
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