研究課題/領域番号 |
17K18307
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
羽野 暁 九州大学, キャンパスライフ・健康支援センター, 特任助教 (80633213)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 近代デザイン史 / 景観・デザイン / 橋梁デザイン / デザイン・サーベイ / オーラル・ヒストリー / 土木遺産 / 昭和モダン / アール・デコ |
研究実績の概要 |
本研究は,大衆文化が花開いた大正~昭和初期に地域の公共施設が急速に近代化したことに着目し,同時代における地域公共施設のデザイン思想を明らかにするものである.大正~昭和初期に竣工した橋梁において,特に設計者の造形意図が表出しやすい橋梁の高欄および親柱等の橋上構造物に着目し,現存する実物のサーベイ,古老への聴き取り,文献資料調査等を通して設計思想を明らかにした. まず,九州地方に現存する大正~昭和初期に竣工した近代橋梁を対象に,デザイン・サーベイ悉皆調査を実施した.現存する対象橋梁の現地調査を実施し,橋梁の親柱,高欄,袖柱,中柱,塔柱,橋燈等橋上構造物について,正面方向および斜方向の6方向を中心に他方向から記録用写真を撮影し,凹凸の形状等,各部位の造形を記録する詳細な実測調査を行った.次に,同悉皆調査をもとにデザインの分類を整理し,分類ごとの意匠造形の濃淡や,同一路線や同一河川など架橋位置における意匠造形の濃淡を把握し,デザインのヒエラルキーや地域性を考察した.また,各分類における特徴的なデザイン事例を抽出し,文献調査およびオーラル・ヒストリー調査によりデザイン思想の解明を試みた.対象橋梁や当該地域の古写真,建設時期の地域の産業状況の整理,また,地域の古老を対象とした当該地域に関するオーラル・ヒストリーの収集により,デザイン思想に関する状況証拠を整理し,考察を実施した.本研究で対象とする大正~昭和初期の地域の近代橋梁は,生存する設計者の発見が困難であり,かつ,設計思想を直接的に記した文献資料は非常に乏しいが,設計時期の時代背景や当該地域の産業や生活の状況に関する文献調査及びオーラル・ヒストリー調査により,デザイン思想に関する十分な考察が可能であった.今後は,より精緻に分析を継続したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は,コロナウイルス感染症の影響により現地調査,ヒアリング調査が実施できなかったが,既存の調査データの分析を深め,研究成果をとりまとめ論文集への投稿を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,戦前の鉄筋コンクリート造の橋梁高欄および親柱のデザイン思想を明らかにするものであり,九州圏内に残存する橋梁の現地悉皆調査を基盤としている.より精緻に研究を遂行するため,調査対象を県道橋にとどまらず移管された旧国道橋、旧県道橋を追加したい.また,地域の近代化に影響を与えた中央都市圏の橋梁デザイン思想との関連性から,戦前橋梁のデザイン思想をより精緻に分析したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は,コロナウイルス感染症の影響により現地調査,ヒアリング調査が実施できなかった.令和3年度は,調査を補足するとともに,既存の調査データと合わせ分析を深め,研究成果をとりまとめ論文集への投稿を実施したい.
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