研究課題/領域番号 |
17K18309
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研究機関 | 関東短期大学 |
研究代表者 |
松尾 由美 関東短期大学, こども学科, 講師 (50711628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多文化共生保育 |
研究実績の概要 |
本年度は、多数派集団に属する日本の幼児を対象にした多文化共生保育プログラムを開発するために、これまで、多数派集団に属する幼児を対象に行われてきた異なる民族や人種の人々に対する偏見低減や友好を高めることを目的とする介入プログラムに関する研究を概括した。その結果、介入プログラムは①主に社会心理学の領域で行われてきた集団間接触仮説(intergroup contact theory:異なる集団のメンバー同士による接触が偏見低減や友好を促進する)に基づくもの、②主にアンチバイアス教育や多文化教育の分野で用いられることが多い一般的社会化理論(general socialization theory:偏見、民主的価値観、文化的多様性等社会に関する知識や情報について学ぶことがより良い集団間関係をもたらす)に基づくもの、③社会的認知発達理論(social-cognitive developmental theory:子どもの集団間態度は、社会的認知の発達段階に影響され、子どもの社会的認知能力の発達を促すことで偏見やバイアスを低減させる)に基づくもの、の大きく3つに分類された。当初の計画では、社会心理学分野で扱われてきた集団間接触仮説に基づくプログラムを開発する予定であった。しかし、成人と比べ幼児を対象にした集団間接触仮説に基づくプログラムはまだ研究の蓄積も多くなく、有効性に関する知見も一貫していない。そのため、子どもの発達段階や状況を踏まえ、様々な理論的背景を持つ介入プログラムを取り入れる必要があると考えられる。そこで、複数の理論的背景に基づく複数のプログラム案を構想し、次年度以降、日本の幼児やプログラム実施の協力園等の実態に合わせた修正を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、今年度中に社会心理学領域で得られた知見に基づき、集団間接触仮説で有効性が示されたプログラムを取り入れた多文化共生保育プログラムを開発する予定であった。しかし、先行研究のレビューを行ったところ、幼児を対象にした研究はまだ知見が十分に蓄積しておらず、より教育効果の高いプログラムを開発するためには、幼児の実態に合わせ、様々な理論的背景を取り入れる必要性があると考えられる。そこで、当初の計画よりもやや遅れるものの、次年度以降、多数派集団に属する日本の子どもの外国の子どもたちに対する態度や知識、理解等に関する実態を明らかにした上で、最終的なプログラムを開発することで、より有効性の高いものとなると考え、当初の計画をやや修正した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、先行研究を概括した結果、幼児の実態に合わせ、様々な理論に基づくプログラムを開発する必要性が示された。そこで、次年度以降、多数派集団に属する日本の子どもの外国の子どもたちに対する態度や知識、理解等に関する実態を明らかにする調査を行い、その実態に基づきより有効性の高いプログラムを開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、集団間接触仮説に基づく多文化共生保育プログラムを開発する予定であり、今年度予算はプログラム開発のために用いる予定であった。しかし、先行研究を概括したところ、プログラム受講の対象となる幼児の実態に合わせ、様々な理論に基づくプログラムを開発する必要性を認識した。そのため、今年度はプログラム案の構想までは行ったものの、試作段階までは至らず、プログラム開発のために用いる予算を次年度に繰り越すこととした。次年度、日本の子どもの外国の子どもたちに対する態度や知識、理解等に関する実態を明らかにする調査を行い、その実態に基づきより有効性の高いプログラムを開発する際に、繰り越した予算を使用する計画である。
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