ピアノの打鍵奏法については、解説や視覚からの模倣だけでなく、科学的な観点からも検証してみる必要がある。今日では、筋電計を始め、計測機器が目覚ましい進化を遂げており、演奏中の身体の使い方を科学的根拠に基づいて考察してみることが可能となっている。本研究は、初心者と熟練者の奏法を筋電計を用いて比較検討することにより、初心者の練習における効率的な上達法を開発するものである。今年度の研究成果としては、初心者30人、熟練者30人双方の演奏中における筋肉の扱い方の比較検討材料となるデータを収集することが出来た。データの採取方法としては、シャンドールの「五つの基本動作」から導き出せる、ある既存の楽譜からのフレーズを弾くこととした。「五つの基本動作」の詳細とは、(A)自由落下(B)五指運動・音階(スケール)・分散和音(アルペジオ)(C)回転運動(D)スタッカート(E)突きとなる。筋電計の計測箇所としては、上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕総指伸筋群、手の甲全体に渡る筋肉群の4箇所とした。8月末までに分析が終了し、採り終えたデータからは、結果として、熟練者は、長年の様々な経験や実績からいかにコントロールされた筋肉の使い方を習得しているかということが浮き彫りにされ、コントロールされた筋肉の使い方を経験から習得することが、上達への一つのキーポイントであることを読み取ることが出来た。また、10月の日本音楽教育学会にてその分析結果を発表することが出来た。また、令和元年5月に論文発表予定である。
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